第13章 愛ゆえに
『ん……っ、?…ッ!!?』
ぼんやりとした頭で目を開く。
しかしその瞬間、一気に現実に引き戻されたような気分になった。
私に触れていてくれているその人に必死にしがみついて目を瞑り、体を思いっきり力ませる。
「!?ち、蝶ちゃ…蝶起きたの!!?…って落ち着いて、俺いるから!!」
『や…ッ、電気……電気つけてッ…』
「電気!?……!そ、そっかごめん、ちょっとここで待って…って無理だよね」
もう夜なのだろう、それで辺りは真っ暗になっていて、電気が点いていないせいで明かりが全く差し込んでいない。
「ちょっとごめんね」
『へ……ッふぇ!!?や、やだ何!!?』
「大丈夫大丈夫、背負ってるだけ。ここ入口まで行かないとスイッチないから、蝶から離れなくちゃいけなくなるでしょ」
『ぁ…』
大人しくカルマ君の首元に腕を回して、普段感じることのない高さに若干怖がりつつもいつもの彼に少しだけ安心する。
中也さんよりも細身の体なのに、中身はやっぱり男の子なんだ。
ふと考えたそんな考えを、すぐさま脳内からかき消した。
…あの人に頼ろうとするんじゃない、もう自分でなんとかしていかなきゃいけないんだから。
もう、私なんかのために危険に晒させちゃいけないんだから。
気付いた時にはカチ、と音が鳴っていて、頭を軽くポンポンと撫でられてからカルマ君に声をかけられる。
「ほら、もう明るいから大丈夫」
『…ッ、ありがと……』
「いえいえ」
その場で下ろしてくれればいいものを、律儀に寝台に座らせてくれた。
少し落ち着いてきたところで、外の暗さを思い出す。
『……!か、カルマ君ごめんねこんな暗くなるまで!!今何時!?早くお家まで送って…』
「え?今…九時前だね。いいよ、別に家帰っても親海外だし…それに今日は森さんからまた新しく連絡が入って頼まれ事もあるから」
『た、頼まれ事?首領から??』
「そ。今日は蝶のこと、俺の家に泊めてもらえないかって」
何事もないような顔をしていつものようにカルマ君はケロリとしながら言い放った。
…え、ちょっと待って?
『な、なんでカルマ君の家…?私一応、家くらいならあるんだけど』
「制服とか学校の荷物とか全部俺のところに送られてきて、暫くこっちで預かっといてくれってさ。探偵社とも話し合ってそれがいいって結論に至ったらしいよ」
