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第13章 愛ゆえに


「蝶ちゃん、一緒に寝るならそろそろ俺も横にな『…もうちょっと』……それ今六回目ね?」

『今だけ…だから……』

「こんなとこ見られたら俺確実に中也さんに殺されちゃうなぁ…………まさか俺のとこでまたスイッチ入っちゃうとは思わなかったけど」

『…カルマ君とこ安心する。来てくれてありがと……ダメだって言ってくれて、ちょっとだけ怒ってくれて』

いやいや、どういたしまして。

軽く言ったつもりでも、正直自分もかなりショックを受けている。
実際に手合わせをしても本気で相手をされたことすらないような中也さんが…俺に直接色々な事を教えてくれたあの人が、まさか誰かに襲われるだなんて。

他の皆は見ていないけれど、俺は真っ先に職員室のパソコンを見たから、一瞬だけだったけれど見てしまった。

あんなにも強い人が、絶対に負けないとふんでいた人が血を流して意識不明になるなんて。

その上、今俺の腕の中でようやっと落ち着いて弱音を吐いてくれた女の子にとっちゃああの人が唯一絶対の存在だったのだ。
発狂していないだけまだマシな方…というより、やはり生まれてからの境遇が左右しているのだろうか。

なんとなく、言ってる事も行動も、全てが大人な気がした。

蝶ちゃんも中也さんも、やはり実験の内容なんかまでは教えてくれないし…やはりその辺りが影響しているんじゃないかと思う。

「気ぃ使って話しかけなかったら蝶ちゃん、絶対誰にも吐き出さずに抱え込んで無理しちゃうだろうと思ったから。とりあえず今は風邪だけちゃんと治して、万全の状態に戻そうよ」

『ん…』

カク、と唐突に力が抜けて姿勢を直した蝶ちゃん。
疑問に思って上から覗いてみれば、やはり疲れているのかうたた寝しているような顔。

細胞を移植して治すという方法を先程教えられ、それを聞いた時は驚いたけれど……やはり流石の蝶ちゃんといえども相当疲れるらしい。

「蝶ちゃん、眠たいなら横になろう?起きるまでついてるから」

『………蝶って呼んで…?』

「え…」

突然の申し出に頭が回らなくなる。

『呼び捨てがいい…カルマ君ならそれがいい』

「女の子に呼び捨てした事ないからちょっと違和感あるんだけど…“親友”さんのお願いは聞かなくちゃね。蝶…寝る?」

『……ん、撫で撫でしてて…』

「…分かった」

自分の欲が、酷く汚いものにさえ思えてしまった。
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