第13章 愛ゆえに
私を落ち着かせるように抱きしめて、頭と背中を一緒にゆっくり撫でる。
最初驚いて体に力を入れて固まったものの、段々と安心させられていく内に体の力も抜けていく。
「それにさっき森さんから俺個人に教えられたんだけど、中也さんの治療してきたんでしょ?怪我治すためにまた変わり身になって、マフィアで見つからなかったB型の血液の提供者をなんとか探して」
『…それしか出来なかったから。普通の手術なんかしてたら血だって足りなくなっちゃうし、してる間に中也さんが……』
「……うん、なら蝶ちゃんのおかげじゃん?それにこの校舎の中から鳴ってた隠しカメラとリンクした機械だって、その隠しカメラだって蝶ちゃんが作って仕掛けてたんでしょ?」
コク、と頷けばよしよしと頭をたくさん撫でられた。
「それのおかげですぐに発見出来て、その後も迅速に手際良く対応したからこその今だよ。奇跡なんかじゃない。中也さんは多分執念か何かで急所をずらした…それで蝶ちゃんがなんとか間に合わせて命をつなぎ止めた。そういうことでいいんじゃないの」
『……助けられた…?』
「うん、蝶ちゃんが助けた。勿論他の協力もあっただろうけど、まず発見が遅れてたら脳なんか撃たれて平気なわけないって」
『………カルマ君、お願いしていい?』
どうぞ?と急かさず了承してくれるカルマ君に、少し懐かしいような気分になりながら、子供になって言葉を紡ぐ。
『ちょっと間でいいから一緒に寝て…?お願い……今一人でいたくないの…っ、私が突き放しても一緒に誰かいてくれなきゃ、私おかしくなっちゃうの…』
ボロボロ零れる涙がカルマ君の制服にシミを作る。
それを気にもしてない様子で、カルマ君はうん、いいよとまた優しく私に言い聞かせる。
「蝶ちゃんがどういう子なのか、日頃から散々教えこまれてるし…どうして欲しいのかもだいたいもうわかるから。……ほら、まだぶつけられる人がいなかったんでしょ?俺なら全然気にしないからさ」
『…ッ、カルマ君……っ』
「はいはい、どうしたの蝶ちゃん。俺はここにいるよ」
『一人にしないで…っ、私の事置いてかないで……ッッ』
子供みたいに泣き喚いて、久しぶりに大きな声で泣き散らした。
腕を回したカルマ君は暖かくて、真正面からぶつかってくれたのが嬉しくて、余計にそれが悲しくなって。
やっと、甘えられた。
