第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
『それに烏間先生、こう言ってはなんですが、私はそもそも、暗殺者を送り込まなくてもいいと思うんですよね』
「どうしてそう思う。俺個人としては、強力な力になるとは思うが?」
強力な力に…なってくれればいいけどね。
さっき言ったように、“力添え”はするけど。
『烏間先生、あと恐らくイリーナ先生と殺せんせーも……薄々気づいてるんじゃないんですか?私が、ただの武装探偵社の一社員なだけなんかじゃないって事くらい』
核心を突かれたような表情になる烏間先生。
「正直に言えば、前にあの国家機密に攻撃を仕掛けた時、俺にはちょっとした仮説が出来ていたんだ。俺は武装探偵社といえども、軍警の助けになるような仕事しか主にしないだろうから、どうやって奴を殺す為に才能を生かそうか、考えようと思っていた」
しかし、と話は続く。
「君は、余りにも君の能力と体術、あらゆる攻撃手段に慣れすぎている。動きが逸脱していいだけならまだしも、普通の生活を送っていて、“生物を殺める事だけに特化した”独自の戦闘スタイルを身に付けるだなんてことは、まずない」
烏間先生の見事な指摘に、少し口角が上がる。
やっぱりすごいな、この先生。
『殺せんせーは多分勝手に調べてるだろうから、烏間先生にだけは言っておきますね?私は皆の警護のために、今回の依頼を受けましたが……私は立派な元殺し屋です。そのもっと“更に”元を辿っていけば、暗殺部隊なんてものに属していた事だってあります』
「自分で予想してはいたものの、やはり驚きだ。君のような子が本当にそうだとは」
殺し屋だって分かって、烏間先生はどうするのだろうか。
『びっくりしました?残念な事に、得意なんですよね……まあ、今となっては、絶対にやらせてはもらえないのでしょうけど』
「俺は、君という人を見て、ただの一人の生徒として扱おうと決めている。元殺し屋…森さんや中原さんを見たところ、横浜ならポートマフィアと呼ばれる組織だろう?たとえそこに所属していた人であったとしても、俺は君の人間性を信じている」
『私の、人間性…?』
「君は余程のことがない限り、今では殺しをする気はないんだろう?それに、他の皆に手を出すような真似をする人には到底思えん」
『そうですか…』
殺しの業界においてはまだ甘い考えの人だと思う。
でも、こんな烏間先生になら、話せるかもしれない…