第13章 愛ゆえに
コンコン、とノックが響くのと一緒に、入るよと言ってから有無を言わさずして無理矢理保健室に入ってくる人物が一名。
腕で顔を覆って、真っ暗な中。
それでも耳は聴こえてるし、大体の雰囲気でももう確信した。
『……何?カルマ君…』
「うん、様子が気になって。具合はどう?」
『具合…ってああ、私か。なんとも無い……どっちかっていうと気分の方が悪いかも』
情けない声で喉を震わせながら声を絞り出す。
正直驚いた、てっきり皆一人にしておいた方がとかって思って入って来ないだろうと思っていたから。
「さっき立原さんから連絡あって、とりあえず保健室で横になってるって伝えたからね。あっちもそれで一安心したらしいし、中也さんの輸血?も終わってだいぶ顔色も良くなってきてるって」
『……そう』
「後もう一件、太宰さんと社長さんから。探偵社を辞めるまではしなくてもいいから、とりあえずまた顔を出せそうな時に出してくれって。何があっても辞めさせはしないし、何も気にしなくていいって言ってたよ」
『…太宰さんか乱歩さんだろうね。私が誰か殺すかもしれないっていう時に……』
多分それも含めて、分かってる。
理解されてる。
あそこには、この世で私を最もと言っていいほどに理解している太宰さんがいる…名探偵もいる。
何かあったら相談しろって事なんだろう。
だけど、それが私には一番難しい。
自分から甘える方法が分からないから。
あの人がいなくちゃ、そもそもが半人前なのがもっともっと未熟になっちゃうのが私だから。
「それでまあ伝えといた方がいいかなって。…でさ、蝶ちゃん?仕切りに今回のことは自分のせいだって言ってたみたいだけど、なんでそんな風に考え込んじゃうの?」
『っ…考え込んでない。事実だから…どう考えても私が原因だから』
「詳しく聞かせてよ、誰にも言わない…絶対約束する。だからさ…中也さんがいなくても、俺だっているんだから……頼ってよ」
少し震えたカルマ君の声。
それにハッとして目を向けると、泣きそうな顔で私を見ていた。
『………でも「でもじゃない、代わりでもなんでもいいからちょっとでも楽になって…」……っ、私の事…嫌いにならない……?見捨ててどっかに行っちゃわない…ッ?』
「行かない。寧ろ追いかけていくよ、俺蝶ちゃんにはしつこいから」
『…!』
撫でられた手が暖かかった
