第13章 愛ゆえに
「俺としては白石さん個人に依頼をしてもいいんだが…契約云々は抜きにしても今は白石さんの状態があまりいいとは思えない。少しだけでもいい、休んでいかないか」
『烏間先生までそんな事言います?私、とっとと証拠持って首領のところに帰りたいですし…早く尋問始めたいんですけど』
「何をするにしてもまずは身体がちゃんとなっていなければならないだろう……そんな風に無理をして犯人探しをしたところで、中原さんが悲しむぞ」
『!………だけど私のせい、だから…早くしなくちゃ、他にまで何かあったら!?今だって、中也さん意識も戻ってないのに…そんな状態でまた襲われたら!!?』
頭の中がぐちゃぐちゃしすぎてて、烏間先生相手にまた感情的な部分が表に出た。
死んでも守りたい人がいる。
死なせたくない人が。
敵の思う壷になんてなるものですか、すぐに捕まえて情報を吐かせて八つ裂きにしてやる。
組織における反逆行為…それも五大幹部の一人を狙った計画的犯行だ、殺したところで誰にも文句は言われない。
「落ち着くんだ白石さん、今中原さんの元にはポートマフィアの者がついているんだろう!!」
『ついて…ついてるから……っ?ついていたらそれがなんだっていうんですか、たった今こんな事があって中也さんは目が覚めなくて、安心なんて出来るわけがない…』
「少しでも冷静になって、それと一緒に体力も回復させるんだ…全開になってからの方が効率もいいだろう」
烏間先生にさえ心配をかけてる…迷惑かけてる。
こういう時、中途半端に子供で中途半端に大人な私は、どうすればいいのかが分からない。
「蝶…一旦横になりましょ?あんただって普通今動いていいような身体じゃないはずよ。あの男を襲った黒幕殺るって話なら、それこそ元気になってから思いっきり殺ってやればいいじゃないの」
イリーナ先生に肩に手を置かれて、どうすればいいのか分からなくてしがらみに囚われていた私の頭に、あの人ばかりが浮かび上がってくる。
誰かに甘えて、子供になってから大人になれとあの人は言った。
甘えるとか…誰に甘えたらいいの?
中也さんがいない今、私が?誰に甘えるの?
泣き言一つ言えないような性格だったこれまでの人生に酷く悔しくなったと共に、自分から甘えに行けない弱さに負けそうになる。
一つ小さく頷いてから、保健室の寝台を借りる事にした。
