第13章 愛ゆえに
職員室には先生方だけになり、中也さんが襲われたであろう時間帯のデータを見付けて再生準備に入る。
「ねえ蝶?その、聞いていいのか分からないんだけど…かなりの強者よねあの男」
『……はい、中也さんは強いです。普通なら絶対に物理攻撃なんかまず効かない…私のせいだから』
「蝶の、せい…?」
『…ここではちょっと』
言いたくない。
ここではも何も、口にだって出来ない。
しちゃいけない。
再生ボタンを押せばイリーナ先生も見入ったように画面を見る。
仕掛けた四つのカメラから、別々のアングルで同時に映像が動く。
中也さんが入ってきて、ややぐったりとした様子だけれども嬉しそうにデザートの半分を食べる…半分だけ残しておいて、他は別のところで食べてきたのだろうか。
しかしそれを食べてから中也さんの様子が更におかしくなって、呼吸困難になってしまったかのように苦しそうな声を漏らしながら床に倒れてしまった。
そこでまたわけが分からなくなる。
『…嘘……、あれは朝作ったばっかりのやつなのに!?なんで!?どう見たってこれじゃ…っ』
「………続きを見ましょう、白石さん」
殺せんせーの声に震える手を動かして再生を再開すれば、少ししてからアラートが鳴り響く音が聴こえる。
そして執務室の中が少し暗くなって、それと同時に執務室に黒ずくめの人間が侵入する。
一人…?
いや、違う。
“二人”いる。
片方の人間が中也さんの頭に何かの彫刻のような重そうなものを投げ落とし、それから容赦なくもう一人の人間が発砲。
正直見ていられない後継だった。
だけどここで私が逃げたらいけない…意地で自分を抑え込んで、何も考えずに注意深く見続けた。
中也さんが動かなくなってから、二人の人物が執務室の中を何やら物色し始める。
そして執務室の中也さんのデスクの奥から、私でさえもが見せられたことの無いようなパソコンが取り出された。
そしてそれにピクリと反応したかのように中也さんは手をそちらに向けて伸ばして、異能を使ってパソコンを粉砕した。
それとほぼ同時にパソコンを持っていなかった方の人物に…頭を撃たれた。
「!!」
「…これは……」
「……白石さん?」
『…なんでパソコンなんか……そんなの守るより、なんで自分を守らなかったの…意味分かんない』
出てきた言葉はそれだった。
