第13章 愛ゆえに
『…なんで今まで気付かなかったんだろ』
「え…?」
中也さんと状態を入れ替えた時のように、作る本人の私でさえもが認識出来ないほどの小さな小さな扉をつくり、それを能力で操作して開ける。
そして、そこを通じて繋がった先の空間と入れ替われば…能力を見せることなく、移動ができるじゃあないか。
かなりの集中力と気力が必要だけれど問題ない。
これなら、いける。
『ごめん、私まだやらなきゃいけない事あるから…学校行ってくる』
「は!?学校!!?蝶ちゃん、能力使わないようにするんじゃ…っ!!?」
「……消えた…!?」
微かに聴こえる向こうの声。
ごめんなさい、心配ばっかりかけて。
だけど大丈夫、こんな時に私は寝てなんていられないから。
扉を消して、到着したのは校舎の屋根の上。
確か烏間先生のパソコンに接続したままにしてあったはずだ。
校舎の中に入って職員室に向かえば、何やら騒がしい職員室の中。
何かと思ってわざと大きめに音を立て、戸を開く。
「え、蝶ちゃん!!?」
「白石!!?……って、お前それ、一体何が…っ」
職員室の中には皆いて、何やら殺せんせーがパソコンの画面に向かって悪戦苦闘しているらしかった。
「ニュヤ!?来てしまったんですか!!?先生白石さんにこれと荷物を届けなければと…」
『ああ…ごめんなさい先生、それ多分先生じゃ外せないでしょう?……烏間先生、まだもう少しパソコン借りててもいいですか?』
「!あ、ああ、それは勿論構わないが…制服を用意しようか?」
『……いいです。ごめんなさい…あと、もしかしたら今日限りで私学校辞めることになるかもしれません』
淡々と述べた途端に、その場の全員が硬直した。
わけが分からないといった顔で私を見る目が刺さるも、それらを無視して淡々と殺せんせーに代わって作業を続ける。
今からするのは簡単な事…やはり犯人にはこの隠しカメラは全てバレていない。
未だに機能している隠しカメラの中のデータを確認するのだ。
『…あんまり皆見ない方がいいと思うよ、教室戻ってて。私もあんまりこういう配慮してる余裕無いから』
「!そんなの気にしな___」
誰かが言った言葉を前に一歩出て止めてくれたのは、カルマ君だった。
「教室戻ろう……あんまり見られて気持ちのいいものじゃないでしょ」
いつかのように口パクで感謝を伝えた。
