第13章 愛ゆえに
いつもの喫茶店はポートマフィアの拠点から近い位置にあるため、本当に走ってきてくれたのだろう。
五分も経っただろうか、その程度の時間でトウェインさんは駆け付けてきてくれた。
だけど顔を見れなくて、そして何よりももう暫くそこから離れたくなくて、中也さんの胸に顔を埋めてうつ伏せになって顔を隠した。
ぐちゃぐちゃになった顔を見せたくなかった。
中也さんに触れていたかった。
もう暫くは、そばにいたかった。
「マーク君、ありがとう来てくれて!!」
「い、いえ、中原君は僕個人としてはもう友人のようなものだと思ってますから…それにあの子が泣いている時には、僕は力になりたい」
『!……ッ、ありがと…う…』
「…どういたしまして。傷は…蝶ちゃんが?」
コク、と頷けばそう、と言われて、少し間をあけてから頭を大きな手で撫でられた。
突然の感触に肩を跳ねさせるも、安心出来る人の手だ…私を撫でてくれていた人の手だ。
「よく頑張ったね…後は任せてくれればいいから、泣いてたっていいんだよ」
『…ッ、泣いてないもん……っ』
「いいから。僕が言ったこと偶には聞いてくれると嬉しいんだけどなぁ」
困ったように言うトウェインさん。
前にも似たようなことを言われた気がする。
それにちゃんと覚えてるよ、トウェインさんが私に言ってくれたこと。
もう、一人で泣いちゃダメだから。
だけど仕方ないじゃない、こんなにいっぱい人がいて…なのに中也さんただ一人がいなくって。
泣けるわけが、ないじゃない。
思いっきり泣いていいわけが、ないじゃない。
だって私のせいなんだもの。
私が中也さんの言うことさえ聞いてれば、こんな事にはならなかったんだもの。
『泣いてない……ッッ』
「…じゃあそういうことにしておいてあげる。でもこれだけはちゃんと約束してよ」
『……約束?』
酷い顔をトウェインさんにだけ見せるように体を起こして、俯いたようにトウェインさんの方を向く。
「うん、さっきもすっごい遠慮してたしごめんなさいって謝ってたから…蝶ちゃんのことは勿論だけど、中原君の事だって僕は喜んで助けるよ。助けになれるんなら嬉しい事だし」
『……嬉し…?』
「嬉しいよ…だからさ、今度からこういう事があったら、迷わず僕の事頼ってよ。一人で悩まないで…折角仲良くなれたんだから」
『!!……ん…』
