第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
途中で行き詰まるかとも思ったが、案外すんなりと校舎までたどり着くことが出来た。
息はちょっとだけ上がってるけど、しんどいという程ではない。
『よかった、出来た…』
横浜では中々する機会もする場所もないので、うってつけの場所が見つかってよかった。
これなら毎日続けられそうだ。
『おはようございまー……ん?』
教室に入ると、勿論一番乗りではあったのだが、つい先日までは無かったはずの巨大な黒い機械が設置されている。
それも、カルマ君と反対側の、私の隣の席に。
『え、何これ』
「聞いていなかったのか?一応昨日、森さんと中原さんにはお伝えしたんだが…」
『あ、烏間先生…聞いてないです、首領はあんな調子でしたし、中也さんは……まあ色々あってそれどころじゃなかったですし。で、これは一体?』
すると、少し黒い機械を見つめてから、真剣な表情で烏間先生は口を開いた。
いやまあ、烏間先生が真剣な表情なのはいつもの事なんだけど。
「転校生だ。白石さんは生徒達の護衛という形でだったが、今度は暗殺者としての転校生…自律思考固定砲台というらしい。見た目はまあ驚くだろうが、一応転校生ださうだ。」
『へえ、転校生で暗殺者…それも砲台ですか。見たところ技術力は確かなものですが、私からしてみれば大したことないですね。きっとすぐにでもボロが出ますよ。』
烏間先生は私の分析に驚いているようだったが、決して口からでまかせな事を言っているのではない。
これでも私は、重要な情報を取り扱ったり機械を製作したりなど、技術者として過ごしていた事もあったからだ。
果たしてこの転校生をプログラムした製作者…つまりは今回の場合で言うところの親が、技術性以外の部分に目を付けて、あらゆる事を想定してこの“暗殺用の機械”を生み出したのだろうか?
答えは勿論、ノーだ。
『“E組の環境にそぐわない”……というのは、機械の内部をざっと想定してみればすぐに分かります。でもそれ以上に、ただ性能が良くて、自分で軌道を操ることの出来る暗殺者擬きの固定砲台なんて、必要ないんです』
「それは、どういう意味だ?君の見解を知りたい」
『…多分、すぐに分かりますよ。実際に見た方が早いです。まあ、何とかなるように力添えはさせていただこうと思ってますが』
「力添え…?」
烏間先生は呆然としているだけだった。