第1章 蝶と白
職員室には、目的の人物である烏間先生がいた。
「帰ったか。…さっき、教室の方が騒がしかったようだが、何かあったか?」
流石烏間先生、鋭いな。
『すみません、少し、生徒と論争になった時にカッとなってしまい、事態が大きくなってしまいそうになりました。…今後一切、このような事がないように、注意します。』
頭を下げると、顔を上げてくれと言われ、素直にそれに従う。
「細かいところは分からないが、何も君だけが悪いわけではないだろう。依頼という形になってはいるが、君だって俺やあのタコの生徒なんだ。ただの口喧嘩、でいいんじゃないか?」
ただの口喧嘩…
勿論、一歩間違えれば、確実に寺坂君を病院送りにしていただろうけど。
元々は依頼で来た学校だけど、対等に、平等に接してもらってもいいんだ。
『…ありがとうございます。あの、さっき抜けた件の事でなんですが、まだ少しやる事があるので、今からまた戻ろうと思います。』
そしてまた、横浜へ通じる扉を作り出す。
「!驚いた……これが噂に聞く異能力か。了解した、気をつけて。」
足取りは少し軽くなっていた。
__武装探偵社 事務所__
『で、どいて頂いてもよろしいでしょうか?そこ。』
私が真っ先に向かおうとしたのは、医務室。
だが、扉の前に立ちはだかる太宰さんと国木田さんによって、中に入るのを阻まれている。
「だめだ。絶対にだめだ。」
「ごめんね〜?入ったら君が何をしようとするかは検討つくからさぁ」
『何言ってるんですか、与謝野先生が来るまで時間がかかるのに、谷崎さんたちを放っておけるわけないんですよ?私が治療すれば出血もこれ以上気にしないで済みます。通してください。』
そう、私は自分の能力を応用して、谷崎さんとナオミさんの傷を治そうとしているのだ。処置ではない。“治癒”と言った方が正しいだろう。
「だから、お前にその力を使わせたくなくて言っているんだろう!」
「そうだよ。何も、本来治るはずのものを、君が無理してまで早く治す必要はないのだから。」
この人達は、悪気があってやってるわけじゃない。それどころか、私のためを思って言っているのだ。
『ごめんなさい。』
「わかればい…っ、おい!白石!!?」
「蝶ちゃん!、これを解くんだ!」
二人には悪いけれど、少しの間だけ私の作った結界の中にいてもらう。