第1章 蝶と白
着いた先は、丁度私が扉を開いて横浜へと飛んだ場所。ここなら割と校舎にも近い。
赤羽君と一緒に校舎へと戻ると、赤羽君はサボり魔だからか、皆気にもしていなかったみたい。
ただし、やはり私には悪い印象しか持ってないようで。
「お前、烏間先生といい勝負してたからって、携帯使っていい理由にもサボっていい理由にもならねぇんだぞ?」
絡みに来るのが早い…暇なのかと聞きたくなるくらいだ。
『なら赤羽君にもサボらないよう言いに行ったらいいじゃない。それに、ちゃんとした理由があって途中退席したの。じゃないと烏間先生に、とっくに怒られてるわよ。』
「そんな事は分かってる。俺達が知りたいのはその理由だよ。納得がいかねぇから分かるように話しやがれ。」
最近の学生ってこんなに上から目線な人が多いのか。
確か、寺坂君だっけか。
『仕方ないなぁ……』
私の言葉に反応したのは赤羽君だった。
さっきまで秘密にって言ってたのに、ですって?
『私はね、防衛省から依頼を受けて来た、政府御用達のボディガードみたいな仕事をしてる者なの。さっきは緊急事態で呼び出しがあっただけ。』
細かいところまでなんて言うわけないでしょう。
赤羽君からは苦笑いで見られていた。
「子供なのにボディガードなんかやってんのかよ?お前みたいなヒョロそうなのがか?さっきは内緒だとか言ってたが、実は男に会いに行ってただけなんじゃ__」
ダンッ…
その瞬間、周りで様子を見守っていた者達は静寂に包まれた。
危なかった。
すんでのところで止めはしたが、寺坂君を床に組み敷き、手刀で首を刺そうとしていた。
『冗談言わないでよね。仮に私に恋人がいたとしても……会いに行けるんだったら、もっと堂々と会いに行くわよ。』
自分の喉からこんなに低い声が出るとは思っても見なかった。
芥川さんに会えて、少し希望が見えてきて、考えないようにしてたのに。
“私が普通の女の子だったら”、愛しい人と会うことなんて、簡単だったのだろうか。
普通に暮らしてる人達の普通の幸せを突きつけられている気がして、らしくもなく取り乱してしまった。
『……ごめん、やり過ぎた。今度から気をつける。』
寺坂君の上から離れ、職員室へと向かった。