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第13章 愛ゆえに


何分程だったかは分からない。
けれどちゃんとやりきった…出来るだけ素早く、やり遂げた。

『……ッ、…』

身体中が…皮膚が敏感になったように、空気に触れているのにさえ痛みを感じたような気がして身体を跳ねさせ、震わせる。

しかしちゃんと綺麗になった大好きな人に覆い被さるように触れて、ドク、と音が聴こえるのを確認すれば、いくらか気分はマシになる。

少し大きい中也さんのシャツを羽織って、ボタンを止めもせずになんとか自力で立ち上がった。

フラフラしながらもなんとか入口の方まで歩いていって、まずは壁を解除する。
そしてカーテンを開けると、そこにいた首領と立原、広津さんに殺せんせー…そしていつの間にか集まっていた親しい人たちが、血相を変えたように私を見て目を見開いた。

『ボ、首領…ちょっと前に終わりました……ッ、ケホ…っ』

「!どこをどうやった!!頼りにしてしまってなんだが君の身体の方も心配だ!!」

『…頭の傷は細胞の移植で……っ、後は、細胞を移植しながら大きなところを優先して移し替えていって…さっき、全部終わりました……!』

ヘラリとなんとか笑って見せると、泣きそうな顔でそこに来ていた紅葉さんに抱き締められようとした。

しかし紅葉さんの着物が生み出したごく微量の風にさえ、今の私の身体は必要以上に反応してしまう。

『いッ…っ、ぁ……ごめんなさ…っ、ちょっと、今は……えへへ…ちょっと、痛い……から………』

「!!…謝らずとも良い。寧ろ蝶は素晴らしい働きを…」

『違う!!!…違う、の……っ、中也さんがこうなったのは私のせいだから…』

初めて紅葉さんに刃向かった。
ここまで真っ向から否定したのなんて初めての事。

「蝶ちゃんのせいって…」

「……白石、少なくとも僕やここにいるものは皆、そうだとは考えていないのだが」

樋口さんに続けて優しい言葉をかけてくれる芥川さん。
けれどもそんな言葉が今は痛い。
酷く惨めな気持ちになる…酷く情けない気持ちになる。

ああ、なんて私はどうしようもない奴なんだ。
中也さんがいないと強気にもなれない…中也さんがいないとまともな返しも思いつかない。

『違う…違うの……っ、私が言うこと聞いてればこんな事には……ッ』

中也さんの容態を見てきた首領がこちらに戻り、私に声をかける。

「だいぶ落ち着いてるよ。中原君は大丈夫」
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