第13章 愛ゆえに
「以前からクオリティが高すぎてあまり変化しているようには見えないのですが」
「馬鹿だな、あいつは作れば作るほど俺の好きなものにしていくんだよ。前でも十分すぎるくれえ満足してたってのに」
「そんな嫁はこのご時世、普通いませんよ?ラッキーですね中原さん、いいお嫁さん捕まえられて」
「うちの蝶は高ぇぞ。手前相手でも微塵もやるつもりはねえからな」
はいはい、それ毎日聞いてますからと軽くあしらわれるも、本当に豪華な本日分のデザートの容器を閉じる事も出来ずに弁当を食べる。
ポートマフィア内ではやはり特殊な出で立ちの者も居て、普通の生活を送ってきた者の中でも俺のように誰かが作った弁当を持ってくる奴はごく少数。
本当に恵まれているし、本当に幸運だったと思う。
そして何よりも幸せだ、これでイライラしてもヤケにならず、穏やかに一日を過ごす事が出来る。
弁当を食べ、ケーキの半分を食い終わってから梶井と話を続けている内に、良くなるどころか寧ろ更に気分が悪くなってきたような気がした。
冷や汗まで出てくる挙句、手も足も指先が冷える上に寒く感じるのに熱のせいで熱いという矛盾した体感。
これは拙い、流石に安静にしていた方が良さそうだ。
梶井との話がいい具合に終わったところで執務室に戻る。
そして毎回デザートは半分だけ一人で味わう楽しみにとっておくという俺の習慣に則って、楽しみにしていた残りの半分を口にした。
しかしそこからだった、ただでさえおかしかった自身の身体の変化に気が付いたのは。
呼吸がしづらくなってきた気がする。
初めての感覚に耐えきれず、音を立てて椅子から床に転げ落ちた時。
突然拠点全体が停電状態に陥ったという放送が鳴り響く。
そしてそれとほぼ同時に執務室の中にバタバタと忙しない足音が響く。
その瞬間。
「____ッ、ガ……っ…」
かなりの重さのある何かが、頭の真上から落とされた。
痛みに悶える余裕もなくなんとか意識を繋ぎとめていれば、腹に五発と四肢に三発…恐らく銃弾を食らった。
異能を使う気力も無かったのだが、俺を襲った相手が敵であることに間違いが無いと気付いて、ふと頭に思い浮かんだのは真っ白な少女のあの笑顔。
意地で奥にしまってあったパソコンを異能を使って粉砕し、その直後に頭に発砲されて意識を失った。
悪い、約束守れそうにねえわ…
