第13章 愛ゆえに
どうしてだろうか、間抜けにさえ感じてしまうその感触が、何故だか少し私を落ち着かせたような気がした。
しかし数秒経ったところで我に返り、校庭までいつの間にか戻ってきていたカルマ君、渚君、杉野君の持っていたナイフを移動させ、自身の銃を構えて対殺せんせー用BB弾を連射する。
「ニュ!!…っ、白石さん、待ちなさい!!」
『ごめんなさい殺せんせー、今本当にそれどころじゃないから!!』
「いいから聞きなさい!!!」
殺せんせーのいつになく緊迫した声に、何故だかまた大人しくそちらを振り返る。
「貴女の言う事は最もだと、立原さんも広津さんも烏間先生も…先生も分かってます」
『!それなら「ただし!!」…ッ?』
「その中原さんとの約束は守った方が良いのではないでしょうか?……それに、先生ならマッハ二十で白石さんを横浜に送り届ける事も可能です」
『!!!!……本当…っ!?ここからなら一分もかからない…!!』
はい、とニッコリ頷く殺せんせー。
ようやっと感情的になりすぎていたのが落ち着いて、呼吸が整い始める。
いいですよね烏間先生、と殺せんせーが言えば、やむを得ん、と許可が降りる。
「風圧は?」
『私が対処できます』
「中原さんに似て強い方だ…じゃあ、行きますよ!」
立原と広津さんも殺せんせーの触手にしっかりと捕まえられて、そのまま最初は少しゆっくりと…空を飛んだ。
「う、嘘だろ……嘘だろおおおおおおおお!!!!?」
立原の叫び声は隣で響いているため、断末魔にもならない。
空中に浮かんだ瞬間に空気抵抗が小さくなるよう壁を展開させたため、高速で移動しても無害だ。
そんな状態で移動すること数秒間。
「ポートマフィアの拠点で良かったですね!…着きましたよ!!」
私達を地面に降ろしてから、殺せんせーは戻ることなく私に着いてくることに。
恐らく手際のいい首領の事だ、中也さんはもう執務室にはいなくなっていて、とっくに医務室に運ばれているはず。
はやる気持ちがそのまま行動に現れているように全速力で走っていく。
殺せんせーは地理感覚が無いため立原と広津さんに案内されていた…ような気がする。
それを放って医務室の扉を勢い良く開け、中の黒服さん達を気にもとめずに手前の大きなカーテンを開けた時。
寝台の上で寝かされて、血だらけになった愛しい人が目を閉じていた。
