第13章 愛ゆえに
『意味がないですって!?そんなものもうどうだっていいのよ!!!とにかく離して!離してくれなきゃ私、立原相手に力ずくで対処しちゃうから…!!!』
「!………やってみろや、てめえの弱みなんざこちとら分かりきってんだよ。友達始めたからには…護衛を引き受けた以上は能力は使わせねえ。俺だってお前の事任されてんだ」
『お願い……っ、離して、今すぐ行かなきゃ…ッ』
立原の言う事だってちゃんと分かってる。
だけどそれどころじゃないの、そういう次元の話じゃなくなっちゃったの。
それでも抵抗を続ける私に…涙を流し始めた私に、遂に立原が腕の力を弱めた。
「おまっ…なんて面して……」
そこに顔色を悪くした広津さんと烏間先生が、校舎からこちらまで走ってやって来る。
「立原!!蝶ちゃんには使わせていないな!!?」
「ジイさん!!なんとか今は…」
『…っ!広津さん、見たんでしょう!?それなら行かせてよ!!!車や電車じゃ、ここからだと時間が……!!』
「蝶、だからお前はもうちょっと落ち着いてから冷静に___」
冷静に…冷静にですって?
どう考えたって、私が行くのが一番いいに決まってる。
私が何とかするのが、早く処置をしてしまうのが、一番いいに決まってるじゃない。
『____ッ、どうやって冷静になれって言うのよ!!?こんな状況で、今すぐにでも駆け付けたいのに!?どうやって冷静になんかなれるっていうの!!?』
「!?感情的になるんじゃねえ、とにかく能力だけはなんとしても…」
『っ!!執務室で“中也さんが血を大量に流して倒れてる”ってのよ!!!?こんな時になんで私が自分可愛さにじっとしてられるっていうのよ!!!!』
「……は…ッ?」
全力で叫んだ。
叫ぶ事しか、出来なかった。
しかし、その映像を見たはずの広津さんと烏間先生は揃って私の腕を掴んで能力を使わせまいとする。
それを思わずギロリと睨みつけ、殺気を外に漏らしてしまった。
「「!!?」」
『………邪魔するつもりですか…?さては広津さん、烏間先生に何か言いましたね?』
「…中原君に頼まれている事だ」
『!!今は…それどころじゃないっていうのに…っ!』
テレポーテーションで二人の腕から抜け出して、人のいない屋根の上に移動する。
そして今度こそ扉を作ろうとした時に、朝にもあった感触が私の腕を優しく止めた。
