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第13章 愛ゆえに


私の能力を利用して空気を水中の三人の口内に送り込んでいるので、一分間くらいなら辛くはない。
対殺せんせー用ナイフと銃をそれぞれ手に持って構えた三人が水中で殺せんせーを見据え、殺せんせーも手が出せない様子。

と、そこで渚君の携帯から大きく笛の合図が鳴る。

「そこまでーーー!!!捕獲されていない泥棒がいますので、泥棒の勝利となります!!!」

その合図と共にプールから顔を出す三人。
杉野君と渚君にお疲れ様と声をかけてから、カルマ君にもお疲れ様、と笑いかける。

「ううん、ある意味一番頑張ったの蝶ちゃんでしょ」

『ふふっ、出来たお弟子さんな事』

手を差し出すとそれを取ってくれ、南の島であった時のようにプールから上がるカルマ君。
タオルと上着を渡したところで殺せんせーが私の方にズイ、と寄ってくる。

「一番頑張ったって…!まさか白石さん、貴女が今回のこの出来すぎた作戦立案を!!?」

『出来すぎたとか言い過ぎですって…しかも皆の協力あってこそのものですし。全員がどう動いてどうなったらどんな風に行動するのか、出来るだけのパターンを考えて確率が一番高そうだったものを優先していっただけですよ』

「お、恐ろしい子…っ」

「ま、この暗殺ケイドロは最初から最後まで、ほぼ全員が蝶ちゃんの掌の上で踊らされてたってわけだよ。実際はざっくりとした説明ばっかりで、細かい動き方を指示されたのは本の数人だろうしね」

怯えたような素振りを見せて私を見る殺せんせーにニコリと満面の笑みで微笑み返した。

しかしその瞬間の事。
まさかといったタイミングで、それは起きた。

_______!!


『!!!?…嘘でしょ、こんな時になんで……ッ!?』

微かに聴こえた音。
それは間違いなく私が設定したもので、私が創ったもので…

校舎の方から聴こえたその音にピクっと反応して勢いよくそちらを振り返り、冷や汗を垂らす。

「白石さん…今の音は?」

『!!聴こえたんですか殺せんせー…?』

「ち、蝶ちゃん?どうしたのさ、なんか様子おかしくない?」

カルマ君や他の皆には聴こえていない。
けれど殺せんせーには聴こえていた…恐らく嗅覚と同じく、聴覚までもが発達している殺せんせーが、聴こえたと言った。

『ご、ごめん皆、先戻る!!!』

「ええ!?蝶ちゃん!?」

「白石!!?」

ただ全力で走り出した。
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