第13章 愛ゆえに
そろそろかなりの距離を移動して目的地に辿り着いた頃。
少し時間もある中で、神崎ちゃんから意外な質問が投げかけられる。
「あの、蝶ちゃん…今回、なんで残りの一分になるまで烏間先生がここには来れなくなるって予想出来たの?」
『ん?…ああ、それは簡単な事だよ。このケイドロの提案者ってさ、殺せんせーなんでしょう?あの先生は何より教育熱心だからさ、こういうゲームと一緒に、多分接触出来る生徒全員に逃げるコツを教えていってるはずなんだ』
どういう事?と首を傾げられて、分かりやすいように説明した。
『例えばここに来るまでの間、私が口煩く言ってた事があるでしょ?』
「あ!足跡残さねえように通った後に隠すとか?」
『そうそう、後はまあ難しいのが多かったからこっそり私が隠蔽していってたけど…ああしてしまえば流石の烏間先生でも見分けるのがどんどん困難になっていって、どんどん捕まえるスピードも遅くなっていくってわけ』
それに殺せんせーこと殺警官の不祥事に持ち込むための譲りネタは全員に伝えて協力を頼んである。
誰がどんな状況に陥ったとしても、烏間先生を走らせ続けるのには十分すぎる時間が結果的に確保出来てしまうというわけだ。
と、ここで律から片岡ちゃん達の班まで捕まり、他の全員ももう逃げる意思を見せなくなったという事を伝えられた。
そしてそれと同時にラスト一分になる手前に差し掛かっていると知る。
『!そろそろ来るよ、殺せんせー匂いだけで多分ここまで来れちゃうから、出来るだけ粘って!ちょっとだけ私も協力するから!』
声をかけると男子三人組は、しっかり準備してくれていたらしく、制服を脱いで水着になる。
そう、私達がいるここまで…“殺せんせーお手製プール”までは、烏間先生でも一分間では辿り着けない。
いいや、辿り着けないところまで引き離せるよう、身体能力に特に秀でた一班を最後までプールから遠くに逃せるように、捕まって逃げ、捕まって逃げを繰り返す算段だった。
牢屋から一定の範囲内で烏間先生が動き続けている内に、“わざと”注意深く見ればわかる程度に痕跡を残した一班が遠くまで逃げる。
そしてこちらはプールまで逃げ、ラスト一分での殺せんせー対策として…
「____!!ぷ、プール…“水の中”か……!!!」
水に触れられない殺せんせーの特性を利用した逃げ方を選んだのだ。
