第13章 愛ゆえに
予め決めておいたgoというサインを指で出せば、岡島君はそれに頷き、他に捕まった子達にも合図の会釈をする。
牢屋にいる全員がそれを確認してから、岡島君は殺せんせーの肩をチョン、とつついて気を引いた。
「は…?お、岡島の奴何する気なんだよ?」
『ふふ、杉野君…大人の世界は汚いのよ?煩悩にまみれた警官の一人や二人や三人くらいの事……』
岡島君は例の物……体操着のポケットに一枚だけ忍び込ませていた水着のグラビア写真を殺せんせーにチラリと見せる。
すると厳つそうな顔をしたまま殺せんせーは静かにそれを受け取り…………懐にしまってそっぽを向いた。
「…一回だけだぞ」
「今だお前らーーー!!!」
『収賄しなくてどうするのよ♪』
岡島君の掛け声と同時にカルマ君が走り出し、牢屋にいた全員を解放した。
「鬼かお前…!天才か!!」
「白石の何がすげえって、誰がだいたいどのタイミングで捕まってどう動くかまで予測してるところだよな…正直伝えられた時は気に止めてなかったけどぴったり当たったわ」
岡島君の声に他の皆もうんうんと頷いて、再びそれぞれの持ち場に戻ろうと走り出す。
『皆の性格はある程度理解してるつもりだし、行動パターンもそろそろ頭に入ってるからね。それは勿論殺せんせーに対しても同じだし……烏間先生でも同じだから』
「ち、蝶ちゃんがいきいきしてる…」
「いきいきしてるけど完全に悪い事企んでる顔だよね」
「渚君、こういうのは悪戯っ子って言うんだよ。可愛いじゃん?」
さあ、次の持ち場に移るよと声をかけて、皆で移動をし始めた。
出来るだけ音を立てないよう静かに動き、通った痕跡を徹底的に消していく。
この班さえ最後まで生き残らせれれば…正確に言うとラスト一分まで烏間先生に捕まらなければ私達泥棒側の勝利だ。
ここは絶対に気付かせませんよ、烏間先生。
「な、なあ?他の奴らが捕まったらもう助けなくてもいいのか??」
『うん、他はもう他の班同士で解決できるよう根回ししてあるから、そう動いてくれれば何とか作戦通りになる!だからここからは、急いで時間内に持ち場に移動する!!』
「「「了解!!」」」
もしも誰かが私の予想したように動いてくれなければ、きっとこの作戦は成功しない。
けれど今の私には、当初は無かった信頼関係というものがある。
きっと、上手くいく。
