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第13章 愛ゆえに


甘えたい事があれば、甘えたい時にちゃんと甘える事。
絶対に遠慮はしない事、そういった内容に関する嘘を吐かない事。
中也さんにだけはそうするように、と昨日二人でした約束だ。

早速遠慮をして危うく破りかけたところだけれど、中学生としてこのクラスで過ごせる最初で最後の時期なんだと、寿命のカウントを抜きにしても楽しめそうなイベント事にはちゃんと参加しようと改めて決めた。

思えば前の球技大会だって出れてないし、何気に学年集会系の集まりにはタイミング悪く全然参加出来てないし。

帰ったら今日は中也さんの大好物でも作って家で待っていよう、ワインに合いそうな日持ちのするアテでもあれば最高かもしれないし。

「蝶ちゃん、調子は?」

『中也さんのおかげで絶好調!熱も下がって今はスッキリしてるし、最近あんま動いてなくて鈍ってるかもだけど頑張るよ!』

「そりゃ頼もしい」

カルマ君と杉野君に笑われる。
罪悪感はもう無い。
これが大病なんかなら絶対にこんなことはしなかったけど、風邪なら多分なんとか大丈夫。

四十五分経って授業が終わったら、すぐに連絡して状態をまた交換しよう。

だからそれまで…それまでちゃんと、中学生らしくはしゃいで楽しもう。

「…いい顔になっている。中原君も喜ぶだろうね、蝶ちゃんがこんなに頼ってくれて」

「広津さん…えへへ、お礼に今日にでも、いっぱい大好物作ってあげなきゃ」

「それは良い、また自慢話も増えるだろうが…七年かけてようやくこんな風に接してもらえるようになったんだ、今までにもあまりなかったくらいに嬉しいんじゃないかね」

あまりなかったくらいにという言い回しに、今までで一番ではないのかと小首を傾げて広津さんを見る。
するとクスリと笑われて、そりゃあ、と続けられた。

「君と恋人になれた時…もしくは君と出逢えたその瞬間が、中原君にとっては一番に嬉しかった時だろうから」

『!!……た、楽しんできます…っ、広津さんありがとう!』

「いやいや、気にしないでくれ。楽しんできなさい」

なんて嬉しい言葉だろう、きっと中也さんが飲んでる最中にでも広津さんに言ったことがある…か、もしくはあの人の様子を見てきたからこそ分かること。

昔の私には分からなかった小さな頃の中也さんを見てきた人だ。

「嬉しかったんだねぇ蝶ちゃん…泣いてる?」

『な、泣いてない!!』
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