第13章 愛ゆえに
午後からは少しこれまでよりもハードになってきた訓練の時間。
木から木へと飛び移るといった私の移動法は流石にまだらしいのだけれど、それでも岩や木の枝を駆使したフリーランニングを導入している。
皆動きが体に染み付いてきているようで、それを飽きずに体に定着させるため、本日は暗殺ケイドロと言う名のフリーランニングケイドロが開催されるらしい。
『ケイドロ…烏間先生!それって私は警察と泥棒とどっちです??』
「ああ、白石さんは戦力を偏らせないために泥棒側に…………!?待て白石さん、君は今熱が下がっていないのでは!!?」
気付かれたか、と顔を強ばらせて、しかしそのまま大丈夫ですって〜と笑いかける。
が、そんな状況で立原に肩をつつかれ、そちらを振り向けばズイ、と携帯を渡された。
電話が繋がっているらしく、出ろとの事だ。
何も疑問に思わずにそれに出ると、途端に怒号が響き渡る。
「こんっの馬鹿野郎があ!!!さっきの聴こえてたからな!?聴いたからなちゃんと!!?絶対ぇダメだぞ体育は!!!熱が三十七度台前半になるまでは絶対ぇダメだ!!!」
キーンとなる耳に頭をクラクラさせながら、そんな事言われても…とついつい口に出す。
私が強く言われてここまで大人しくなるのはこの人が相手の時のみだ…もうお分かりであろう。
『け、ケイドロしたい…中也さん』
「だからダメだっつって…!……んな頼み方したってダメだぞ!?可愛くお願いしたってダメなもんはダメだからな!!?」
『……ダメ?皆とケイドロするんだって…クラス全員で、一緒にケイドロするんだって。蝶ケイドロしたこと無いの、友達いっぱいいる中でそういう遊びもしてみた___』
「____分かった!!いいよいい!!存分にしてこいもう!!!」
半ばヤケになったように泣きながら了解を得た。
しかし流石は保護者という名の親バカ…という名の私バカの鬼。
予想はしていたのだけれど、やはり条件付きだ。
「ただし、流石のお前もその状態でやるのは危なっかしい…体育の間だけでもいいから、その熱何かに移せねえのか」
『!む、無理だよそんなの!?移せるのは移せるけど、私のやつはこういう場合、対価交換になるから人としか移しかえられないの!!』
「…んじゃ、そっから電話したままでいい。四十五分だろ?俺と体温を交換しろ」
『は……、え…っ?』