第13章 愛ゆえに
「はあああぁ〜……!」
涎を垂らして今にも食らいつきそうな衝動に駆られたような表情で、嬉しそうにプリンを見つめる殺せんせー。
殺せんせーが来る前に皆写真を撮ったりなんかして、巨大プリンはもう食べられてもいい状態だ……あれが爆破されるのか。
「これ、全部先生が食べていいんですか!!?」
「えっ、あ、うん!廃棄卵を救いたかっただけだから!」
「茅野ちゃんと蝶ちゃんが考えたんだよ〜?」
中村ちゃんの声にえへへ、と照れるカエデちゃん。
天使だ、天使がここにいる。
なんて考えていればいつの間にやら手をプニプニしたものに包まれる。
何かと思ってそちらを見ると、目からダバダバと涙を流す殺せんせーに私もカエデちゃんもてを握られていた。
「茅野さぁん…白石さん……っ」
「それじゃ、先生?私達英語の授業あるから!」
「勿体ないからぜーんぶ食べてね♪」
中村ちゃんと倉橋ちゃんの声で皆ゾロゾロと校舎に向かっていく。
ふむ、意外な事にまだ殺せんせーに演技だとは悟られていない…まあ少しは上達したのかな?
この先生、基本的に生徒には甘いような気もするし。
「もろちんです!!夢が叶ったあああ!!いただきまあああああす!!!!」
スコップを両手に物凄い速さで巨大プリンを食べ進めていく殺せんせー。
……何だろう、ここまで来てまたなんだか切なくなってきた。
プリンを見つめながら、踵を返して校舎に私も入る。
ここからが勝負…竹林君がプラスチック爆弾に取り付けられているモニターから、殺せんせーが来るタイミングを見計らう。
「プリン…爆破……」
カエデちゃんの呟きに、夏休み前からちょこちょこ二人でプリンについて語り合っていた日やプリンについて研究した日、試作したり中身のアイデアを出し合ったりした日のことを思い出す。
決して長く時間を作れたわけじゃ無かったけれど、それでも確かに、プリンが私達の絆までもを深く深く繋いでくれた。
そしてそこまで思い返して、口をついて出た言葉がこれだ。
「『ダメだあああ〜〜〜!!!!!!』」
「愛情こめて作ったプリンを!!」
『爆破なんて!!!』
「『ダメええええええ!!!!!!』」
二人揃って窓に頭を打ち付けて叫び始める。
思うところはやはり一緒。
巨大プリン、勿体ない…可愛いプリンが……勿体ない!!!