第13章 愛ゆえに
校舎に入ろうとしたところで携帯に着信が入ってきて、何かと思いきや中也さんからの電話だった。
本気でかけてきたのかこの人。
なんて思いつつもかかってきたらかかってきたで満更でもなくなってしまう私は大人しく出る。
『もしもし…今学校着いたところで皆もいるし、本当に心配しなくても大丈夫だよ?』
「フリーランニングは」
『やろうとしたけど立原とカルマ君に全力でとめられたので仕方なくやめておきました』
「だから心配なんだよお前…っ」
そんな事を言われても、かれこれもう一週間程は体調が元の調子に戻らなくてさせてもらっていない。
そろそろ再開しないといけないのに、何が原因なのかずるずると風邪は続くし…
『ま、まあまあ…ほら、今日も愛妻弁当作ってるんですからちゃんと味わって食べて下さいよ?』
「あんだけ大人しくしてろって言い聞かせても作りやがった悔しいながらにも絶品の愛妻弁当な」
『中也さんへの愛の結晶ですからね!今日は久しぶりに全品私が作りましたし、ケーキもちょっと豪華にしたんですよ!』
「ほお?そりゃ楽しみだ……ってお前また敬語ん戻ってる」
あ、と見られているわけでもないのに口に手をあてて気が付いた。
『ごめんなさい、つい癖で…えへへ』
「…まあ何にせよ、元気そうでよかった。調子悪くなったらすぐに連絡してこいよ、いつでも迎えに行ってやるから」
『何かあったら立原の事こき使って帰るんで大丈夫です〜!中也さんちゃんと拠点で仕事してよ、ただでさえ組合戦の影響で量多いし大変なんだから』
「はは、違いねえ。…でも俺にも癒しがあってもいいだろ、今は言っても本来シルバーウィークなんだ、電話くれえさせろ」
それくらいなら仕方ないか、なんて確かにと納得してしまう私も私だ。
中也さんに言われる上に自分自身の欲が出てきてしまうのだから仕方ない。
煩悩退散!
中也さん離れしなさい、学校でくらい!
自分に言い聞かせて、しかしそれでも中也さんには弱いのが私。
『や、休み時間だけね!…って休み時間じゃややこしいか』
「いや、俺お前の休み時間は把握してるから問題ねえぞ」
『なんでそんなの知ってるの中也さん怖い』
「お前流に言えば愛の力ってやつだな」
『へえ、そうなん……!!?ば、馬鹿!!もう始まるから切るよ!!?』
「可愛い奴…おう、またな!」