第13章 愛ゆえに
「へえ、それで無理矢理横浜に置いてきたんだ?」
『保護者が学校にそこまで来るのもね…それにほら、そんな事で心配してこっちになんて来させてたら中也さん本当にこっちで仕事場とか作りそうじゃない?』
「言えてる、あの人なら蝶ちゃんのためにって平気でやりそう」
『ね!?この前だって色々ともらったお返しに、結局万年筆と温度調節機能がしっかりしてるワインセラーと買ったんだけど…』
____俺死んでもいいかもしれねえ
『なんて言いながら立ちくらみ起こして倒れかけたのよ!?』
私の必死さもさる事ながら、流石に内容が内容だ。
話をしてるカルマ君も、それを聞いてる立原も顔が若干引きつってる。
広津さんなんかはもう何年もの付き合いになるからか、慣れたように聞いてるみたいだけれど。
「でも中也さんもやっと素直になってきたんだねぇ?可愛いって一言言うのにさえらしくないからーとかかっこつけてたのに、それが今日も可愛い、愛してるとか…」
『違うわよ、今日も可愛いぞ!愛してる!!だから』
「うん、ベタ惚れだね」
『まあ昨日の今日でかなり心配させてるしなぁ…』
熱まだ下がってないならそりゃ心配にもなるよ、とカルマ君に返されてハッとした。
危ない、私とした事が変な事口走りかけてた。
気にするなあんなもの、警戒だけしていれば私が死ぬなんて有り得ない話。
それにあの人だって私の能力のせいかもしれないなんて言ってくらいだし。
『熱下がってるのに過保護だから困るんだけど…でもそういうところも嫌いじゃないからなぁ。今日だって危うくOKするかもしれなかったから心を鬼にして断ってきたんだよ』
「もうどっちが大人なんだか」
『……あの人だっての方が私の何倍も大人だけどね』
「ふぅん?…あ、プリンいい感じじゃない?あれ」
校庭にそびえ立つ巨大プリン。
型にまだ入ったままだけれど、恐らくちゃんと固まってる。
理論的にもバッチリだし、計算上も縮小版モデルから割り出した割合もあれで問題は無いはずだ。
『あれにカラメルソースが乗ればもう完璧にプリンだね………ああ、このまま校庭にモニュメントとして一生飾っておきたい』
「「それは腐るわ」」
『わ、分かってるし』
カルマ君と立原の声が重なった。
珍しい事もあるものだ。
まあ、腐らせない方法は知ってるし、私なら出来てしまうのだけれど。