第13章 愛ゆえに
「んで、何がどうしたらそうなんだよ、ああ?お前わざとやってんじゃねえだろうなおい、それでも学校行くってのか、自分の体と俺の欲よりもプリンの方が大事ですってか」
『中也さんの欲入ってるんだそこ』
「当たり前だろうが!!!なんなら一生お前を隣において仕事して」
『今私探偵社員だし三つ掛け持ちは流石にキツいかなぁ、なんて…ケホ、』
小さくしたはずの咳の音。
しかし鬼の耳は敏感なようで、すぐに察知してギロリとこちらに目を向けられた。
それに合わせてそっぽを向く。
私知らない、なんにも知らない。
「なんで昨日よりも地味に熱上がってやがんだお前はあああ!!?」
『さ、三十七度台なら問題「あるに決まってんだろ、後半なんだよ後半!!!」ち、蝶言ってる意味がよく分かんないかも』
「……よし、行きてえな?そんなにプリンの元に行きてえんだな?」
正確に言えば爆破する予定のプリンなのだけれど。
「それなら俺もパソコン持ち出してお前見張りに行ってやらあ!!!」
『何その過保護!?いらないから!!』
「お前はプリンの元に行きたくて俺がお前の元に行きてえんならそうするしかねえだろうが!!」
『学校に保護者が来すぎ!過保護がいきすぎると流石に嫌!!!』
そこまできっぱり言い切れば、さしもの中也さんもピシャッと固まった。
…少し言い過ぎたか?ううん、これくらい言わなきゃ本当に椚ヶ丘まで来るもんこの人。
横浜でやれば楽にできる仕事をわざわざ椚ヶ丘まで来てやる必要ないし。
しかも何かあったら立原や広津さんだっているんだから、大丈夫なのに。
「い、嫌…嫌、か……そうかそうか、思春期は仕方ねえ」
『思春期じゃなくても普通そこまで過保護にならないですから…言い過ぎたけど嫌いなわけじゃないんだよ、ごめんね』
「よし、待ってろ一時間おきに連絡してやるから寂しがらなくても『寂しがってないんで行ってきますね』い……蝶おおお!!!!!」
中也さんの叫び声に、いつもなら無視して出ていくものを、ピタリとドアを開けたところで立ち止まった。
なんというか、昨日の今日でやけに中也さんが必死になってるような気がしたから。
『な、何ですか…?』
「!!今日も可愛いぞ!行ってこい、愛してる!!!」
『へ!?な、なんですかいきなりまた!!?……っ、わ、私もですよ!行ってきますね!!』