第13章 愛ゆえに
初めてをもらい受けて女にしたい…俺がこいつのそれをもらいたい。
都合の良い考えばかりが脳内を巡っていく。
しかしそれに対して、純粋な気持ちで、澄んだ瞳で少女は言った。
確かに、女の子の身体があげられることを心の底から喜んでいた。
涙を流して幸せだと言っていた。
不安や焦燥に駆られた俺の…それこそ煩悩とも呼べるこの黒々とした思いを、怖がるどころか受け止めてやがった。
こういう事をするからタチが悪ぃ、いつもどんだけこっちが我慢してると思ってる………どんだけこっちが、我慢させろって願ってると思ってる。
そんな事を気にもとめないような顔してすよすよと眠りこけながら、頬に触れてる俺の手に擦り寄ってくる始末。
可愛…じゃねえよ俺。
いや、蝶はそういう生き物だ仕方ねぇ、可愛い生き物のこいつに可愛いと思うことの何が悪い。
「……こういうことすっからまじでタチ悪ぃんだよこいつ…っ」
悶え殺されそうになりながらもなんとかブレずにもう一枚…今までで一番の出来じゃあないだろうか。
渾身の一枚だ、こんなに俺に擦り寄ってきててカメラで撮れる程無防備な時なんか、日中ねえからな。
というか撮らせてくれねえ絶対ぇ、恥ずかしがって隠れやがる。
まあ、いいとこ俺もかなりの変態的趣味ではあるとも思うが…隠し撮りのファイルも多くなってきやがったな。
近い内にでもハードウェアでも買っておくか、と決めてから、もう一度ガッツポーズをした。
『んん……、中也さんうるさ…』
「!!!?」
『…んにゃ……へへ…プリンは正義なん…だょ………』
焦った、本気で焦った、一瞬マジでこの世が終わるんじゃねえかと思った。
中原、生還だ。
しかしそろそろ危ないような気がしないこともないので、音を立てねえよう携帯を置いてから、ゆっくりと蝶を寝やすいように動かして自分も布団に入る。
……それにしても、本当に女らしくなっちまったもんだ。
思えば餓鬼の頃からもそんなところが見え隠れしねえこともなかったが…
サラリと蝶の髪を掬って、毎度の如く綺麗だと見つめる。
人混みの中でも、この髪が視界に移っただけで目を奪われちまう。
こんなに綺麗な白色の髪…白色なのだろうか、銀色なのだろうか。
「俺は黒の方が好きだったはずなんだがな」
黒も似合いそうだ…しかしやはり白だな、こいつには。
白が一番、好きになっちまった