第13章 愛ゆえに
特に変わったところもない様子だったトウェインさんと他愛もない話をしてから家に帰り、すっかり夜になって、学校ではしゃぎすぎたせいかすぐに眠くなってベッドに入った。
冷却シートを貼られることなくなんとか冷たいあの地獄から逃れ、目を閉じて意識を沈めていく。
____懐かしいような、新鮮なような。
学校の皆がいて、探偵社やポートマフィアや組合の人達もいて、何気ない日常。
そんな中、私の隣にはいつも大好きな中也さんがいて、大好きな皆に囲まれていて…
だけどどうしてだろうか。
段々と、私の視界がぼやけていく。
みんなの表情が…声までもが、消えていく。
どうしてだろう、見えているのに届かない。
すぐそこにいるはずなのに、皆私に気付かない。
いつものように歩く皆に取り残されて…私がいなくても笑ってて。
当然のように、そこには私が存在していなくて。
私がいないのになんとなく笑っているような愛しい人が過ぎていって。
声も出せない、そんな世界。
声が響かない、そんな世界。
“この世界で死んだら”私はいったいどこへ行くのだろう…どこか、死んだ後に向かうような場所が用意されているのだろうか。
もしかしたら、死んだらそこへ行けるんじゃないだろうか。
死んだら……死ねたら、あの世界へ帰れるのではないだろうか。
そしてそこに帰れたら…………私がいなくなったら…?
誰かが私を覚えてる?誰か、私を知っている?
中也さんは、私をちゃんと覚えてる…?
『_______…ッ、アホらし……』
目を開けた。
声が出た…声が響いた。
現実世界なのだと認識して、脳がちゃんと“なんて馬鹿げた夢だったのだ”と考え始めてくれる。
私は先に寝ていたはずなのに、いつもの抱擁が私を包み込んだまま、優しくあたためてくれていた。
寝息を立てているのを見ると、この感じでは恐らく起きてはいない。
良かった、こんな事で起こさなくって。
もう一度眠りにつこうと目を瞑る。
けれどもなんとなく眠りたくなくて、結局何度試しても眠れなかった。
起きないでねと祈りつつ隣で眠る中也さんの腕から抜け出し、リビングに移動して紅茶を淹れ、焦らずゆっくりそれを飲む。
何をしているんだ私は。
何が元の世界だ。
何が、皆の中から消えてしまうだ。
ちゃんと成人してやるって言ったばかりでしょうが、私の馬鹿。