第13章 愛ゆえに
「蝶ちゃん今日はいつにも増して美味しそうに食べてくれるわねぇ…もう一個おまけしちゃう♪」
『!やったぁ!ありがとうございます!!♡』
「いいんすか本当に!?これ今日サービス三個目じゃ…」
「いいのよいいのよ、余っちゃいそうな分なんだから!」
奥さんにたっぷりとプリンをご馳走になって、たらふく食べること数十分。
今日は他のお客さんもいない様子で、貸切状態のような雰囲気での中也さんとのお茶……メインはプリンなのだけれど。
時間帯的にはそろそろ夜ご飯の時間だからなのかたまたまなのか、アットホームな空気になっている。
『こんなプリンを買い占めないなんて勿体ない…っ、美味しい…!』
「数日おきに来るお客さんが今日はまだ来ないから、ちょっと多めに作ってたら余っちゃいそうになっちゃってるのよ。今日は来るって読んでたんだけど外れちゃったわね」
「『数日おきに…?』」
私と中也さんの声が重なったところで入口の鈴がカラコロと鳴る。
「あら、今日は夕方だったの!多めに作ってなかったら全部蝶ちゃんにあげてたところよ?」
「え、待って蝶ちゃん来てるの!?蝶ちゃんこの間ぶり……って中原君つきかぁ」
「なんだその反応は?蝶、そこに並んでるプリン全部平らげちまえ」
ショーケースを親指でクイ、と指す中也さんにぱあっと目を輝かせ、いいの!?と舞い上がったところでダメだから!!!と必死に止められた。
誰あろう、最近ここのお得意様になりつつある人物、トウェインさんにである。
『でも中也さん食べていいって…』
「おいおい、蝶にこんな顔させていいのか手前?泣くぞ?こいつ今日十五個とか言いつつとっくにもっと食ってんのにまだまだ食う気でいんだから」
「え、何、僕が悪い感じなのこれ!?」
『……ふふ、冗談。トウェインさんからかっただけ』
にやりとしてやったり顔でトウェインさんを見れば、やられたといったような表情で返された。
ううむ、流石は立原二号だ、典型的な立原気質だ。
「お前本当おもしれぇくらいに引っかかるよな」
『からかいがいあるトウェインさん好きだよ』
「蝶ちゃん、そういうこと言うとまた僕の方に中原君から制裁が……ッ!!…待って、なんかやけに今日素直だね?」
『?いいじゃない、今色んな人に甘やかしてもらって気分いいんだから』
中也さんは横から口を出さなかった。