第13章 愛ゆえに
「………どうする、その百九十日っつうのをどう考える」
『…その日に何かがある以外に、私が死ぬなんてまずありえない話だから。だからなんとか気を付けるしかない……与謝野先生と中也さんが近くにいてくれたら、何とかなるはず…』
「…………それで、いいのか?お前、成人するまでって…待てんのかよ」
中也さんの言葉にドキリとした。
待てるのか?待てるわけない、寿命なんてものを見る以前から、とっくに待ってなんていられない。
だけどここでふと我に返って冷静になった。
いいじゃない、これでもし本当に死ねるんなら…結婚なんかして中也さんを繋ぎとめてしまう前にいなくなるんなら。
それはそれで、この人の邪魔にならないで済む。
この人が将来、本当に普通の人と結ばれるかもしれない可能性を潰さずに済む。
『…どうしよ、中也さん……頭の中じゃ、いい子でいれるのに、さぁ……?…っ、悪い事考えてるんだ……この件につけこんで中也さんにもっと甘やかしてもらおうとか、こういう理由、つけてとっとと結婚式こっそり挙げちゃおう、とか……』
いつものような、二十歳になってからなという返しがこない。
成人してからだっつってんだろがって、いつもみたいに返されない。
中也さんの顔を見ても、ひどい顔をさせていた。
なんで暗い顔してるのよ…
『…成人するまでしないっつってんだろって言い返してよ……笑って?中也さん…ねえ、笑ってよ』
「蝶…」
『笑ってってば…私、意地でもそれまで生きてやるからさ。……笑って…?』
「………お前が強気でいるんなら、俺が足を引っ張るような真似はしねえ」
中也さんに手を取られて、指に…そして手の甲にキスを落とされる。
「だが、お前が今見てえに泣きてえと思った時…俺の前でだけは嘘を吐くな。何があっても、俺には嘘吐いて強がんな……いいな」
『…ん、分かった。約束する…プリン食べに行こう?』
「!…そうだな、いくつ?」
『十五!!』
「ははっ、おばさん忙しくなんぞ?了解」
涙を拭って、中也さんにつられて笑顔になった。
何とか出来るはずなんだ、私が死ぬなんて、ありえない話なんだから。
『ねえ中也さん、家に帰ったらまたいっぱい甘やかして!』
「好きなだけ甘えてろ、鬱陶しくなるくれえに甘やかしてやっから」
『え、それはちょっと』
「断んのかよそこで!!」