第13章 愛ゆえに
『……なんて?』
「ッ!だから、なんでそんな笑ってんだよ!?なんで笑える!!?さっきの数値がどんなもんなのか分かってんのか!?」
外で…人のいないところで必死な声で怒鳴られた。
怒られてるわけじゃない。
なのにこんなに大きな声で怒鳴るのは…中也さんが怖い時。
『分かってる。分かってるから、その時にちゃんと警戒して…』
「頭のいいお前なら分かってんだろ、警戒云々なんか関係ねえってことくらい」
『……じゃあいいじゃん、考えてたって仕方ないよ。仕方ないんだから…楽しいこと、しておこう?もし本当に私が死んじゃって、生き返れなくなっちゃったら時間が勿体ないよ』
その言葉にまた頭にきたのか、中也さんがカッとなって私を路地の壁に押し付けた。
胸ぐらを掴んで無理に押し付けられたから当然痛い…なのに、拒もうとさえ思えない。
変だな…私。
「なんだよ、時間が勿体ねぇって…笑ってんじゃねえ!こんな時にへらへらしてんじゃねえ!!仕方ないなんて正論聞いてねえんだよ……っ、お前、自分の感情殺してんじゃねえぞこの餓鬼が!!!」
『!!!………餓鬼、じゃない…もん』
「背伸びして大人ぶってんじゃねえっつってんだ!俺にまで嘘吐くんじゃねえって何回言えば分かるお前は!!?俺にくらい……っ、俺にくらい素直になれって…何回言えば……ッ」
『大人ぶってないし……プリン食べたいから食べに行こうって、いいじゃん。思った事伝えてるし、寧ろ子供っぽい提案で…』
ポロ、ポロ、と雫がとめどなく零れ始める。
ああ、どうしよう…どうしようか、どうやったらこの人を悲しませないで済むだろうか。
ずっとそればかり考えてたのに、私が泣いたら全部水の泡じゃあないか。
もしかしたらこれからも生き返り続けて、ずっと幸せな毎日が続いていくのかもしれない。
だけど、一度死ぬというだけでも私にとってはともかく、中也さんにとっては私の死なのだから。
……そして拭えないのが、私自身が本当に終わってしまうということ。
どうしよう、思い付いちゃったら頭から全然離れないや。
「お前……さっきあいつに言われた時、なんて思った?…全部、吐き出しちまえ」
『………中也さんと、大人になる前に死んじゃうんだって…おっきくなれずに終わっちゃうかもしれないんだって…』
____成人する前に、終わっちゃうんだって