第13章 愛ゆえに
相手は首領が認める腕の持ち主、それに正確な異能力…間違う事がないだなんてことは明らかだ。
「け、けど蝶ちゃんの能力を考えれば、その日に大きな何かがあるのかもしれないというだけかも…それに合わせて探偵社の与謝野女医を連れていればなんとかなるんじゃあないのかい?」
『!そうだ、与謝野先生……百九十日って…?首領は寿命を測ってもらったことは?』
「あるけど、やはり何十年分もあったせいでかなりの桁になってたよ……というかだいたい皆そうさ。だから“日”で見きれない人は“年”で見るんだ」
一瞬、その時期を考えて、殺せんせーによって地球が爆破されてしまうのではないかと考えた。
けど、違った。
私だけだった。
首領はそんなふうに言ってくれてるし、この人の言う能力というのは私の体質を含めての事。
この身体が死んでしまうということなのか私という存在が死んでしまうということなのか、分からない。
「……あんたが頑丈で優秀な人間だって事はここに入ってる俺でもよく知ってる。あの国木田独歩や太宰治が賞賛して、あんたの手を借りたいだなんて言っていたくらいだ…」
私の体質を考えれば、大病だなんて可能性はゼロだ。
病気や毒の類は無い上、そんなものじゃあ殺されたところで生き返る……あれ、もしかしてその生き返りが出来なくなるって事なの?
それともこの190というカウントが、私の場合は百九十回生き返るとか?
違う、それは無い。
百九十日後に、何かがある…何か、私の経験したことのないような何か。
「もしかするとあんたの能力…の内に、防御能力みてえなもんもあるんだろ?そいつのせいで少しおかしくなっちまってんのかもしれねえって可能性はある」
『……ありがとうございます!変なお願いしちゃってすみません、一応用心しておく事にしますね』
「あ、ああ…」
「蝶ちゃん……」
椅子から立ち上がって、中也さんの外套を軽く片手でキュ、と掴む。
『…行こ?』
へらりと笑って何も喋らない中也さんに話しかけると、そのまま中也さんは何も言わずに立ち上がった。
箕浦さんにもお礼を言い、後は帰れるからと中也さんの手を引いて出て行った。
中也さんの空気は重々しくてもう一度話しかけてみる。
『中也さん、今日プリン作ってたら食べたくなっちゃったんだ!だから今から一緒に食べに_』
「…んで、笑ってんだよ」