第13章 愛ゆえに
『ええっと…?あの、私貴方とお会いしたことは…』
「会ったことはねえがよぉく知ってる…何せ俺はお前の同僚の国木田独歩と太宰治によって数ヶ月前に捕まえられた人間なんだからな!!」
『!青の使徒事件!!思い出した、国木田さんの報告書で見た人だ』
太宰さんの名前を聞いてピク、と青筋を浮かべた中也さんは無視して話をすると、相当怒っている様子の相手…けれど首領に気がついた途端に大人しくなってしまった。
「あ、あんた…っ?な、なんで白石蝶と!?」
「彼女は私の親しい知人でねえ……君が探偵社員に恨みを持っているのは知っているんだが、彼女には「…れよ」んん…?」
肩や喉を震わせて何かを呟いた相手に、私も首領も、そして箕浦さんまでもが聞き入る。
どんな恨み言が言われるのやらと半ば呆れて聞こうとするが、相手の口から放たれた言葉は予想の斜め上をいき、そこからまた斜めに進んでいくようなものだった。
「俺…探偵社員に恨みはあるがあんたの大ファンなんだよ!!!サインくれよサイン!!!」
『へっ?』
「「はぁ!!?」」
箕浦さんと中也さんの声が重なる。
「ま、待て!面会は許可したがサインなど…俺でも頼めていないというのに!!」
「待てはこっちの台詞だ手前ら!!何交際相手の目の前で下心丸出しにお近づきになろうとしてやがるああん!!?」
「「こ、交際相手!!?」」
「『はぁ…』」
箕浦さんはこの人が私に会いたがっているのを知っていたんだとか…親バカサイトの影響凄いな、本当。
大ファンって何なの大ファンって。
「ま、まさか交際相手の顔まで見れるとは…」
「成程、やけに一緒にいるのをよく見かけるなと思っていればそういう…」
『も、もういいから本題に…あと、私サインとか持ってないんで』
それを言うと明らかにショックを受けたようなリアクションで固まる二人。
ううん、やりやすくなったのかやりにくくなったのか…どちらにせよ寿命を操る能力者が好意的な人なのは安心だ。
「そ、そうっすね!で、その本題ってのは??」
『何故に敬語…えっと…人の寿命を数値化して見ることが出来るとお聞きして。私の寿命を測ってみてほしいんです』
「あ、あんたの寿命を?そんだけでいいんすか!?」
『は、はい…』
それなら任せて下さい!と能力を発動させられ、私の足元に大きく数字が浮かび上がった。