第13章 愛ゆえに
「ああ!?立原手前何言ってやがる!!?こいつが可愛いのなんか元からだろうが!!!」
「あ、はい、そっすね」
『中也さんは蝶が寂しがってるのを察知して飛んできてくれたんだよね♪ね、ダーリン!ハニーって呼んでみて♡』
「ん?ハ……って待て、騙されねえぞ、まだ結婚してねえからな俺ら?いいか蝶、そういうのはちゃんと結婚し……つうか呼ばねえよ!!!名前で呼べ名前で!!!」
ちぇ、気付かれたか。
まあそこまでそんな呼び方にこだわりは無いし、ノリで言ってみただけだからいいんだけれど。
『で、本当の用事は?中也さんがこっちに来る用事なんて…』
「……お前を心配してってのは理由にしちゃいけねえのか俺は?」
『え』
「…中原君は今日の分の仕事をもう片付けてここまで来たみたいだね。どうせ今日は蝶ちゃんが意地でも早退しないだろうから終わったあとの方が心配だ、と」
広津さんの言う事はその通りだったらしく、中也さんが私の額に手をあてる。
「朝よりはちょっとマシになったか?下がってんのが一番なんだが…」
「さっき最後に測ったら三十七度五分でしたよ」
「長引きそうだな今回のは」
中也さんは車で来たらしく、それに乗って横浜に戻るのだそう。
立原と広津さんも一緒に乗って、立原が運転する事になった。
後ろの席に中也さんと一緒に乗るのは久しぶりで少し新鮮だったのだけれど、こんな楽しみもいいものだ。
存分に中也さんを堪能して、横浜へと帰っていった。
「久しぶりだな!銃で襲われたと知った時は驚いたが、元気そうで何よりだ。さ、こっちに」
『お久しぶりです、すみません面会なんていきなり取り付けてもらっちゃって』
箕浦さんに連れられて首領と中也さんと三人で面会室に案内してもらう。
軍警には上手く話を通してあるらしく、地位のある首領と繋がりのある人がいいように下に話を回してくれたんだとか。
箕浦さんには今私が追っている人物の異能と類似するものであるから、それを確認するための面会、そして能力の披露だと言ってあるそう。
嘘では無いけれどやはり少々心苦しいものがある。
心の中でごめんなさいと謝りつつ面会室に足を踏み入れると、どこかで見た事のある顔をした男の人が座っていた。
するとその人も私の顔を見て、何故だかギョッとして驚き始めた。
「お、お前白石蝶って…探偵社員!?」