第13章 愛ゆえに
夕方になってプリン液の工程は全て終了し、残すは明日の作業のみとなった。
昼過ぎくらいにもなると腕や肩の調子も良くなり、もうこれでいつでも中也さんに抱きつける……はあ、中也さん…。
『蝶はいったいいつまでこの虚無感と闘わねばならないのでしょう…中也さんのいない地球なんてお米のないおにぎり同然!!そんな地球ならとっとと殺せんせーに爆破されてしまえば!!!』
「あの人生きてっから!!てかなんだよ米抜きのおにぎりとか、具と海苔だけってか!!俺ら他の民衆は具か海苔って事っすか!!!」
『ううむ、不安要素はにおいかなぁ…』
「お前ちょっとは聞けよ俺の話!!!」
竹林君がE組に復帰してから火薬の取り扱いのマニュアルを覚え込んだということで、プリンの奥底に設置されている爆弾は彼が作ったものらしい。
性能や構造をチェックし、不備が無いかも確認した。
まあ、不安要素はあるにはあるが…これもいい経験だろう、最初は失敗して学ぶのがいい。
『殺せんせーの嗅覚がどれくらいのものか……私より鋭かったら完璧にアウトだろうな』
「あ?何の話だ?」
『んーん、なんでも…………って、あれ…?』
立原と会話しながら駅の方まで歩いて行く途中、それも山を下り終えたあたりで、私の待ち望んでいたシルエットが見える。
なんというサプライズ、ありがとう、生きててよかった!!
『お米……じゃなくて中也さん!!貴方の蝶は待ってましたあ!!!♡』
「うおお!!?お前熱下がってねえんだから走ってんじゃ……っギブ、ギブだ蝶さん、分かった、お前が俺に会いたかったのはよおおく分かった!!!」
『なんで椚ヶ丘に!?もしかしてもう結婚式の準備が出来たの!?』
「成人してからだっつってんだろが可愛いなこのやろうが!!?そろそろ諦めて成人するまでまてっつの、あと米ってなんだ米って!!」
勢いよく飛び付いたままギュウッと抱きついていれば、立原が先程の白石おにぎり論を中也さんに説明した。
「それで米って…おにぎりも最近具が多めのやつ多いんだぞ?知ってんのか?」
「え、そこっすか」
『でもお米がない海苔付きの具とかおにぎりじゃないじゃない!よって中也さんがいない地球は地球とは認められません!!』
「何なのお前可愛いんだけど、不覚にも滅茶苦茶な事言ってんのに素直に可愛いとか思っちまうんだけど」