第13章 愛ゆえに
椚ヶ丘に到着し、山を一気に駆け抜けようとしたところで襟を後ろから掴まれて止められる。
「阿呆かお前、風邪ひいて余計馬鹿になってる上に朝っぱらから肩と腕痛めてる奴がなんで木渡りフリーランニングなんざするんだよ、阿呆だろ完全に」
『立原にだけは言われたくな「少なくともお前よりかは怪我も少ねえよ!!」元気なんだね~』
「こらこら立原、女の子の身体はデリケートなんだ、我々と一緒にするんじゃない」
流石広津さん、フォローが上手いどころか引き立て上手、なんて出来る人なんだ。
「女の子だあ!?よく考えてみろよジイさん、女の子がなんで中原さんとあんな勝負繰り広げられる!?あの特別丈夫に出来てる訓練室が半壊だぞ半壊!!!」
『はぁ、これだから立原は…』
「てめぇマジで覚えてろよ、言っとくけどお前の知らねえところであの人がどんだけお前への愛情話を暴露してくれてることやら…」
『!!!?あの人まだそんな事してるの!!?』
そろそろネタも尽きた頃だろうと思ってたのに。
…あの人からしてみれば毎日がその話の宝庫か、了解、分かった。
知ってた。
「はあ、これだから立原は……」
「ジイさんまでなんなんだよ!!?事実だろうが、あの人話だけにとどまらずし……ッ!!」
『し…?』
「……聞かなかったことにしてくれ、俺が殺される」
広津さんの方に顔を向けても苦笑いを返されるのみ。
しから連想される事…それも親バカなあの人から思いつく言葉……
『し…し……新婚旅行の話?』
「「ブッ!!!」」
『じゃあ真剣交際における結婚までの道のりを…』
「朝から何の話してんの、蝶ちゃん♪」
少し後ろから聞こえたフランクな声。
一日ぶりのその声に嬉しくなって、声の主のもとへとすぐに移動する。
『カルマ君!おはよう!!』
「おはよ、立原さんも広津さんも…風邪の具合はどうなの?昨日結構熱高かったって聞いたけど」
『うん、もう大丈夫だよ!朝家出る前は三十七度七分まで下がってたから!』
「それ結構高…ってそっか。今日の作戦、茅野ちゃんと蝶ちゃんが二人で計画してたんだよね?そりゃあ楽しみだったわけだ」
カエデちゃんから私も一緒に立てていた作戦であると皆に伝えられていたらしく、計画内容も内容なので、私の楽しみ度合いは想像がついていたんだとか。
「三十八度超えたら早退だけどな」