第13章 愛ゆえに
「ほら、やっぱ可愛いじゃねえかお前…なに考えてたのか薄々想像ついてっけど、心配することねえよ」
『…ッハ…っ、蝶ってもう呼ばないの……?』
「…呼んでほしいの?」
『ん…』
自分はもう俺のこと中也さんって呼んでるのにかと聞き返されて、それは…とついつい口が開く。
『中也さんは…中也さんだから。……やっぱり呼び捨て、出来ないや』
「昨日怖がらせちまったせいか?」
『ううん…首領に逆らってまで私の事助けてくれたの見たら、やっぱり中也さんだなぁって』
「何だそれ、逆効果ってか」
心の中で謝りつつも、私の中ではやはり中也さんは中也さんだから。
ゆっくりでいい、頑張って私が中也さんに追いつけるくらいに大人になれた時に…本当に同じ目線に立てるくらい成長した時に、改めてちゃんと中也って呼べたらそれがいい。
『本当に大人になれるまで待ってってわがまま…ダメ?』
「……可愛いから許す」
『何それ、変なの』
クスクス笑うと中也さんにギュ、と腕を回される。
「変じゃねえよ、蝶相手なんだ」
『中也さん私の事好き過ぎ』
「どの口が言ってやがる、もっかい塞いでやろうか?」
『時間無いから夜にして』
「夜とか…お前言うようになったな」
何が?と聞き返すとあ?と何故か驚かれる。
「い、いやだってお前…」
『夕方は軍警に行かなきゃだし、二人の時じゃないと嫌』
「………純粋って罪だよな。お前まじで綺麗だわ、いろんな意味で。俺が悪かった」
『何言ってんの中也さん、馬鹿なの?』
毒吐いてても可愛いとか何この生き物、と更にギュウッと抱きしめられた。
左側だけは力を込めないという配慮に紳士さを感じて少し悔しくなり、それと共に余計に中也さんがまた好きになる。
毎日惚れていってるってこういう事…私の方こそ、いつもいつも好きになるばっかりだ。
このまま二人で大人になって、結婚して本当の家族になって…ずっとずっと、幸せに暮らしていくのだろう。
一緒に過ごして、毎日毎日お互いがもっと好きになって…いつか心の底から中也って呼べるようになって。
だからそれまでは、もう少し子供のままでもいいや。
中也さんって甘えるのが、今は心の底から心地良い。
____こんな甘えた考えを持って彼の要望に応えられなかった自分を、後で死ぬ程恨むことになるなんて。