第13章 愛ゆえに
「お前のデータを見ていても、確かに俺がお前と出会った日…そしてその次の日も、お前はまだ成長した姿のままだった」
『し、知らない…だってそんな頃なんて、私は研究所の外に一人で出ているはずがない』
「七年前だ…お前を見つけて連れ去る以前にそれがあって、それでお前を探し続けて……」
『知らないって!!!…分からないって言ってる、でしょ』
ハッとしたように中也さんがこちらに目線を向けた。
この人が私を探していたのは、その女の人の影響なの?
だから、ずっと必死になって私を守ろうとしてきたの?
違うって分かってても、言い聞かせようとしてもそんな考えが拭えない。
「悪い、変な事を……でもお前、本当にそういった事は無かったのか?」
『無いって…言ってるでしょ』
「………最初はそういった不純な動機からお前を探し当てた俺だったけど、お前じゃねえと早々に考えて、それからちゃんと蝶を好きになってる。そこだけは不安にならねえでほしい」
『!…なんで早々になんて、そういう風に考えられたの?』
「お前を拾ったばかりの頃に、一回だけ、誰かを助けたことがないか聞いただろ」
中也さんに言われて、ぼんやりとその質問をされたというのを思い出した。
どうしてそんな事を私に聞いたのか、当時はわけも分からず返事だけをしたものだった。
私が人を助けたことなんて…そうか、思えばそういう理由で聞いていたのか。
その時点でこの人の中でのその女の人と私とは別人という風に区別されて、その上で私を好きになって……
もしも…もしも私が、その人と同じような外見じゃなかったら。
もしも私が、治癒術を扱える人間でなかったら。
『………ねえ、もし本当にその人がいたとして、今目の前に現れたらどうするの』
「礼だけ言わせてもらうさ」
『私の事はどうでもよくなっちゃわない?なんでそんな風に断言できるの?』
「その女がお前と別人だとすれば、俺はお前にしかこういう情を抱いちゃいねえからだ」
どういう事かと頭を悩ませれば、中也さんが困ったように笑って分かりやすく……非常に分かりやすく簡潔にそれを教えてくれた。
「お前と出会って少ししてから、すっかり俺の中でのそいつとお前との立ち位置が逆になっちまったからな」
『逆……って…!!?え、ちょっと待って中也さん!?』
「毎日惚れてる」
『な、ッ…!!?』