第13章 愛ゆえに
『………その治癒っていうのは…これ?』
「間違いねえ……でも、なんでお前が…」
『なんではこっちの台詞…おかしいのよ、これを扱える人間がこの世界にいる事の方が。それに、私みたいな能力と慣れがなきゃ、そもそもこれを発動させるだけのエネルギーが足りない…』
「…お前、この世界で今の技を使った事は?」
中也さんに何故かそう聞かれて、キッパリと無いと言いきった。
そんな事があるはずが無い。
エネルギーの源とするための物質がこの世界の大気には少ししか含まれていない事、そしてそれを無理矢理自分の元へ集めるためには私のような能力が無ければ出来ないという事。
それを説明しても中也さんは表情を変えずに私を見続ける。
『……無いから、本当に。知ってるでしょう?中也さんが今の私くらいの歳の頃なんて、私はまだ実験施設にいたのよ?…中也さんと出会ってもなくて人を怖がっていたような私が、誰かを助けるためにそんな術を使う事があると思う?』
実験施設の中で…外の人間を知らないで。
「…お前は根が優しいから分からねえ」
『無い、から…それに別の世界のものを人前で見せるなんて軽率な行為、私は簡単にはしない………ていうか、中也さんはその人に一目惚れをしたんでしょう?顔とか色々見ていたんなら、私とは別人だなんてすぐ分か____』
「……だよ」
微かに聞こえた声に…少し喉を震わせて発せられた言葉に、思わずえ、と声が漏れた。
「俺を助けたその女は………瓜二つだなんてレベルじゃねえほどにお前と同じだった…俺が女に対して綺麗だなんて感情を抱くのは、あの容姿……つまりお前、ただ一人なんだよ。…お前、なんだよ」
『…待って、本当にわけが分からな……!それでさっき姉妹とかって…?』
「双子でもこんなに似やしねえ、お前だと…前より成長して余計に重なる」
『ち、違う…違うから。私は、誰かにそんな事をした事なんて……っ』
ピタリと当てはまるものが多すぎる。
普通じゃ誰にも成し得ないことである上、容姿まで…この人が似ているどころか同じであるとまで言い張るその女の人。
だけどそれは私ではない…私であるはずがない。
言い知れぬ恐怖心が私を襲って、本当にそんな人が存在して、この人の中での私の存在意義はそこなのではないかとさえ思ってしまう。
私はその人じゃないのに…その人であるはずがないのに。