第13章 愛ゆえに
中也さんの執務室に戻るとベッドにちょこんと座らされ、真っ先に体温を測られる。
結果は中也さんの予想通りまた上がっていたようで、三十八度八分とやや高め。
すぐさま中也さんに横にならされ、それと一緒に普段はあまり使わない冷却シートを額に貼り付けられた。
普段から熱の時にこれをあまり使わない理由は至って簡単な事。
それは…
「おら、あと三ヶ所貼るから大人しくしとけ」
『や……っ、絶対嫌だって…ッひっあ、ぅ……!!?』
両脇、そして首にも冷却シートを貼られるからだ。
下ろしていた髪をかきあげられ、横を向かされた隙に項に貼られた。
突然ピリッと走る極度の冷たさに身体が跳ねて、甲高い声が漏れる。
『も、もういい!!首貼った!!貼ったからもう後は…っ、中也さん!!!』
「ダメだ、薬効かねえ上に無理したんだから我慢しろ」
『そ、そこに貼る中也さん嫌い!!!』
「んじゃ貼らねえ蝶が俺は嫌い」
パッと手を離してベッドから立ち上がる中也さんに、目を丸くしてそちらを見る。
澄ました顔で私を見てからクルリと背を向ける中也さん。
え、嘘、嘘だよね?
中也さんに嫌いって言われたのなんて、喧嘩する時くらいしか…
静かに離れていこうとする中也さんに手を伸ばそうとすれば、なんだと横目で聞かれて手を止める。
『ぇ…っ、中也さん…嘘、だから……嫌いじゃないから…っ』
「それがなんだよ」
『ッ!……ぁ、…なんでもな……ッひゃう!!!?』
顔を背けた隙に腕を上げられ、そこにピタリと冷却シートが貼り付けられた。
………やられた。
上から覆い被さるように顔を近づけられ、ニヤリと口に弧を描いて私とおでこをくっつける中也さん。
目をギュッと瞑ると阿呆、と声が優しく響く。
「お前が嫌いじゃねえのも知ってっし、俺がお前を嫌うわけねえだろって」
『で、でも中也さんが嫌いって……言うからぁ…っ!』
「ちったぁこれに懲りて大人しく療養するこったな。そんだけ冷やしてたらさっきまでよか冷えやすくはなるだろ…寒くなったら言えよ、あっためてやる」
『……………寒くなった』
「切り替え早ぇわ」
目を逸らして言うと中也さんはよしよしと撫でながら抱きしめてくれ、いつもの安心感が私を包む。
しかしそんな時だった。
外からとても大きな爆発のような音が聴こえる。
窓の外からのものだ。