第13章 愛ゆえに
首領の方に電話が入って、なにやら先程話していた異能力者と面会するのは明日の夕方が良さそうだとのこと。
…そうか、明日から休みだったんだ。
今日学校の方はどうだったんだろ、竹林君はなんとかなってるだろうけど、カエデちゃんはそろそろ動き出しているのだろうか。
なんておぼろげに考えていると、中也さんの背中に背負われた。
『…背中おっきい……中也さんの背中好き』
「お前俺ならどこでもそう言うだろが」
『あえて言うなら眉間にしわばっかり寄せてるのは好きじゃない時もある』
「……お前見てっと調子狂うんだよ…気ぃつける」
何やら、いらいらしているというわけではなかったらしい。
なんだ、それなら良かった。
安心してしっかりした背中に身を預け、首領に挨拶だけして執務室から外に出た。
すると、出た先には先程の騒動を目撃した黒蜥蜴、芥川さんに樋口さん、そして紅葉さんに見知った黒服さん達までもが立っている。
「蝶!!ああ蝶、中也に何かされなかったかえ?騒動を聞きつけてみれば中也がお主に攻撃を仕掛けていたと…中也、女子に手を出してはいかんじゃろうて。ましてや相手は蝶で……?」
「………分かってる。今はあんまり言わねえでくれ姐さん…やっちまった後だから俺もちょっとキてんだわ」
威厳の無い弱々しい声色に、誰も何も言えなくなった様子。
『中也さん悪くないよ、蝶が手出させ「いいから、もう謝んなよ。何があろうと手ぇ出した方が悪いってのは確定事項なんだ、お前は俺にんな事しなかったろ」…中也さんが悲しい方が痛いから』
「!!…そうか、それもそうだな。よし、手前らよろしく頼むわ、ちゃんと仲直りしてっから……心配かけたな」
「い、いえ!!」
立原の返事に合わせて皆胸を撫で下ろし、ゾロゾロと揃ってどこかに歩いて行ってしまう。
樋口さんや芥川さん、そして紅葉さんは残っているままだ。
「驚きました、中原さんと白石があんな風に衝突しているのは」
「ああ、まああんなに喧嘩したのは初めてだからな。蝶の本気を出させるには時間が足りなかったが……にしても痺れたろ?戦闘に脳が切り替わるとまた別の意味で良い女になるんだよな」
『何言ってるの中也さん?』
「強くて容赦ねえ女がいいって話だ」
口に出したのは私と紅葉さんだけだったものの、芥川さんも樋口さんもマフィア脳だなといった目になった。