第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
『今だからこそ大丈夫だけど…でも私、本当に怖くてっ、中也さんに忘れられてるんじゃないかって……なんとも思われてなんかないんじゃないかって!』
「もういいっ…悪かった、ムキになっただけなんだ」
中也さんの声色が元に戻った。
嫌いな太宰さんの名前が出たから、あんなに嫌なオーラが出ていたのだろうか。
理由はどうあれ、太宰さんは私に嫌な事なんてしないから。
それだけ分かってもらえれば、大丈夫だから…
「……蝶の方から太宰に頼んだって聞いて、びっくりしただけなんだ。だがそういう事だったんなら仕方ねえ、というより俺が悪い。…でも、俺以外の野郎と二人で寝るのは、やっぱ落ち着かねえからやめてほしい」
『中也さ…それ、どういう……』
「お前に何かあったら嫌なんだよ。見たところ無意識なようだが…かなり無防備だし」
無防備?
『私、そこら辺の男の人より強いよ?』
そう言うと中也さんは、ああもう、と項垂れる。
「そういう事じゃなくてだな…もうちょいお前は周りの男を警戒しとけ。自分が綺麗なんだってこと、もっと自覚持て」
『へ、きれ…?』
「……もういい。とにかく、今後絶対に俺以外の野郎と一緒に寝たりすんなよ!頼むのは勿論だが、頼まれても寝るな、分かったな」
『は、はい?』
「よし」
くしゃっと髪を撫でられ、中也さんはそっぽを向いてしまった。
そしてちらりと一瞬、私の方を見たかと思うと
「で、結局今日はどうしたいんだ」
と一言。
『き、今日……今日も、中也さんと一緒に寝たい…です』
「ん、ちょっと待っとけ」
すんなり通った私のお願い。
言えば、中也さんは分かってくれる。
「ほら、そっち入れ。狭くなるけどそこは勘弁な」
さり気なく壁側に行くよう促して、寝返りをうっても落ちる心配のないようにしてくれた。
だ、だめだ、ここまでされるともう抑えられません…!
『中也さん…私、もう我慢できませんっ』
「は、蝶?おいっ、なんでくっ付いて!!」
中也さんの体に腕を回して、思いっきり抱きつく。
ほんのりと香る石鹸の匂いに、今私も同じ匂いなんだろうなあ、なんて想像して嬉しくなって。
『多分欲求不満ってやつです、中也さんの充電です!』
「それ絶対人前で言うなよ!?意味分かってねえから!…じゃなくて、お前は俺をどうしたいんだああ!!」