第13章 愛ゆえに
『ン…っ』
「…一回で満足か?」
『もうちょっとした____』
言いかけたところで、ゴホンと咳払いが聞こえた。
そちらにチラリと目を向ければ、首領が少し顔を赤くしてこちらを微笑ましそうに…けれども苦笑いで見ている。
「首領?どうされました??」
「い、いやどうされましたって…な、仲直りは済んだのかな?」
『まだ済んでない』
「「えっ」」
目を点にした首領とポカンとする中也さん。
仲直りとか、どういうのかよく分からないんだもの。
そんなの全然分からない…だから、いつもよりいっぱいこの人に甘える事にする。
私には、それ以外にもう大丈夫だって伝える手段がない気がするから。
…そうするのが、一番私も安心出来るから。
『いっぱいちゅーして?』
「い、いっぱい…?」
『うん!昨日みたいに、朝までするのもいいよ!』
「蝶ちゃんに何してんの中原君!!?」
ガタッと遂に立ち上がった首領に、流石に中也さんもあたふたし始めた。
「お前、なんて事バラして…!?」
『中也さんキス鬼だもんね、隙あらばいつでも「分かった!してやるからもうよせ、気が済むまでしてやるから!!」じゃあ今して、今』
「……中原君、これはいったいどういう事かね?」
「…………こういうのも可愛いでしょう?」
「うん、可愛い。けど僕辛い」
即答した首領を無視して早く早くと中也さんに腕を伸ばす。
娘がァ…!!と嘆く首領に対して蝶はうちの娘ですといつものように対処する中也さん。
若干耳が赤い気がするけれど、チラチラと私を見てからしょうがねえな、と再び腰を屈めてくれた。
それに気を良くしてニコリと微笑めば、両頬に手を添えて軽めのキスを何度も落とされる。
しかし繰り返されているうちに段々と何かが高まってきて身体がゾワゾワし始め、中也さんの上着を掴んで肩を震わせ始めた。
すると中也さんは私から唇を離して、ジ、と私に視線を送る。
それが終わりであるということを感じて目を薄く開くと、中也さんが口を開く。
「満足っすか?」
『…ギュッてして…?』
「はいよ」
包み込むようにふわりと優しい抱擁が、私を安心させてくれる。
中也さんだ…怖くない。
『ハ…ッ、ち、ちょっと疲れた……かも…』
「そりゃあな。おぶっていこうか?」
『ん…』
「風邪ん時は甘え上手になんだよな」