第13章 愛ゆえに
首領の紹介してくれる異能力者は現在軍警に収容されているらしく、首領のアポによってシルバーウィーク中に面会、そして寿命の測定が可能となった。
立会人としては箕浦さんがついてくれるらしく、まあ知らない人がそこにいるよりかはいくらか緊張せずにいられそう。
「という事になったけど…ああ、僕と中原君も行っていいことになったからそこは心配しなくてもいいよ。で、ここからだけど…どうするの蝶ちゃん?危険が孕んでいる以上は僕もやはり、相手の能力にかかりにいくというのは危険だと思うんだけど」
『中也さんがこんな身体になるよりよっぽどいいじゃないですか、危険も何も「蝶」…なんで怒るのよ、意味分かんない……』
「お前が死ぬのと俺が死ねねえようになるのとなら、俺が死ねねえようになっちまう方が何倍もマシだって事にいい加減気づけ」
淡々と述べられた言葉に、またカッと頭に血が上りかける。
落ち着け、私の為を思って言ってくれてるんだから…悪い事を言われてるわけじゃない。
『……全然分かんない。なんでこんなのになっちゃう方がマシだなんて言えるの?』
「お前もう忘れてんだろ…思い出せよ、何つって約束したか。それに考えてもみろ?お前が死んだら俺が一人んなる、俺が死んでもお前が一人になる、それなら両方死ななけりゃずっと二人だ」
『だから、中也さんは分かってないからそうやっ……て…っ?………二、人…?』
「自分の経験ばっかで忘れてやがったな…そうだ、もう寂しい思いはしなくていい。寧ろずっといれりゃあ人より長く一緒にいれんだぜ、前向きに考えてみろよ」
そうだ…そうだった。
変な身体のせいで寂しくて、悲しくて情けなくなって、そんな事ばっかり考えてて忘れてた。
……それなら、それでこの人が幸せに感じてくれるのなら。
最悪死ぬかもしれないようなリスクを冒してまで、寿命を削る必要なんて無い。
理論的にはほとんど出来ないものだと思いはするのだけれど、それならわざわざ命を縮める必要は無い。
気が抜けたように肩の力が抜けて、グラリと上体が前方に傾く。
重力に逆らわず、そのままテーブルに激突するかと思ったところで、軽く、けれどもしっかりと受け止められた。
「危ねぇっつの…やっぱ一丁前に気張ってるけど子供さ、お前は。ほら、動いたからまた熱くなってる」
『……ッケホ、…忘れてた』