第13章 愛ゆえに
首領の執務室で誰もいない事や何も仕掛けられていない事を確認してから、ソラさんの事は伏せて、寿命を操作する異能力者の話から始める事にした。
そして中也さんの意見としては、私が敵に自分の寿命を縮めさせるような行動を取らせないようにしたいということ。
無いとは思うのだけれど、万が一にも本当に死んでしまうといけないからと心配されての事だ、理解は出来る。
「成程、それは確かにその通りだ…私が同じ立場だとしても止めはする。だけど蝶ちゃんからしてみれば喉から手が出るほどに欲しい有限の命だ、何人か僕も知ってはいるからね、そういう異能を持つ人は」
「ですが、それに関しても以前、蝶とは話をつけてあるんです。蝶とずっと過ごしていられるような方法があると」
「!…それが話したく無かったことかい?」
首領の問いに小さく頷いた。
中也さんにお願いすると、以前この話をした時の話をそのまま首領に伝えてくれる。
私の能力で、私と同じ体質の人に出来ること…私と同じく、半分移すだけだから有限になるかもしれないのだけれど、それでも一度や二度じゃ死ねない身体に作りかえられるという事。
約束としては、中也さんが死んでしまうような事態に遭った時点でもまだその意志があるのであれば移し替えるということなのだが。
「ああ…だいたい見えてきたよ。それにしてもなんていい子なんだ蝶ちゃん……っ、やろうと思えばいつだって出来ただろうに、中原君の事を考えて我慢していたんだよね!!」
『……我慢も何も、そんな事人間がしていい事じゃありませんから』
「それでも気が狂うような思いをした事もあったろう、よく耐えてきたよ…で、今回の件について、蝶ちゃんの意見としては“そういう事”なんだね?」
『はい』
私と首領のやり取りに、中也さんは首を傾げてこちらを見る。
どういう事だよと理解しきれていない中也さんに、今度は首領が目を丸くした。
「ち、蝶ちゃん?まさかそこの考えを中原君に伝えてはいなかったのかい?」
『?伝えたら伝えたで止められるだろうなって思って』
「そりゃあ止めはするだろうけどね!?…そりゃあ自棄になったのかと中原君も思うわけだ」
頭を抱える首領を見て、どういう事だよと私の方に質問がくる。
言ったところで中也さんを思い詰めさせてしまうだけだろうし、どうしたものか…