第13章 愛ゆえに
『…だから、中也さんとの意見の衝突です。捕まらないように逃げてるだけで、中也さんは私の安全ばっかり考えて何もしないようにさせようとしてるだけ』
「その中身がよく分からないから混乱しているんだ…君達がそこまで意見を食い違わせることなんか無かったから余計にだよ。説明してくれ、なんでこんなに「首領」!中原君?」
何故だか私の前に立つように首領に向かって、堂々と口を開く中也さん。
なんで…?
なんで、そういう事をするの?
「すみません、そこは俺にしか話せないことだと本人から言われてるもんで…勝手な事ですが、詳細までは話せません」
「中原君がそこまで言うなら……と言いたいところだけど、組織をまとめる長として無視はできない。これ以上ここでその鬼ごっことやらを続けられても、皆怖がってしまうだろう?」
分かるね?と諭すように言う首領に、中也さんは分かりました…小さく呟いた。
私を庇うような行動に驚きはしたものの、やはり中也さんにも立場というものがある。
それに本人の中でも私の中でも、確かに周りに迷惑だってかけているし、首領のような言い方をすれば全てが合理的ではない。
ここで話されても首領の執務室で話されても、どの道私に対する人の目は変わってしまうだろう。
こんな悪魔のような考え、聞いたら聞いたで軽蔑されるか利用されるか…
親しい人達にそんな風に思ってしまうところも含めて、やはり自分が大嫌いだ。
どうしよう、ポートマフィアにいられなくなったら…それもそれで悪くないか、色んな事に巻き込まずに済むんなら。
踵を返してその場から出ようと、足を進めようとした時だった。
「…………分かりました。どうしてもと仰られるのであれば、この場をもって俺はポートマフィアを退職させていただきます」
「「「!!?」」」
「ちょっ、ちょっと中原君、本気で言っているのかいそれは!!?」
「中原さん!?ポートマフィアを抜けるって…幹部ですよ!?それだけの地位も実力もあってどうして!!!」
どよどよと騒がしくなる声が、どこか遠くに聞こえた気がした。
待ってよ、なんでそんな事が言えるのこの人は?
聞き間違いよね?何かの間違いでしょう、そんなの。
「こいつのためなら組織を抜ける覚悟はとっくにしてましたから。どうぞ、処分を___」
『ま、待ってよ!話す!!話すからそんな事しないで!!!』