第13章 愛ゆえに
「い、家出…?……え、蝶ちゃん?家出するの?」
『はい、色々あって私を野放しにはさせられないから監禁してでも捕まえとくって。なんで私はそれに絶賛反抗中っていうわけです』
「要するにこれまでで最大級の大喧嘩中です、首領。止めねぇで下さい」
「し、執務室は?」
「『壊れるといけないんで出てきました』」
それが分かってるんなら円満解決してくれない!?
首領の言うことは最もだけれど、どうやっても意見が食い違ってしまうのだ。
お互い折れることが出来ない理由があるからこそ退けないし、納得させきれないなんてこと分かりきってる。
ジ、と中也さんからの視線を感じてそちらを向けば、中也さんが改めて私に向かって口を開いた。
「お前は頭が良すぎるからな、どこから嗅ぎつけていつ無茶しやがるか分からねえ」
『これだけは絶対譲らないから。意地でも中也さんには捕まらな…っ!ちょっと、首領に言われてるんだから今くらい!!』
「お前がとっとと意見を曲げりゃいいだけだ!んな馬鹿げた考えするくれえなら今すぐ半分俺に寄越せ!!!」
『…ッ、経験した事も無い人が軽々しく言わないで!!!取り返しがつかなくなるのはそっちの方よ!!!』
流石に向こうも頭にきたのか、異能を発動させて重力を操った…しかしここは私が読んでいた通り。
宙に浮いたのは私ではなく…
「は!?…っえ、ちょっと待てどうなってんだこれ!!?」
「!はあ!!?立原!?なんで手前の方に発動して……!…やってくれる……!!」
仕掛けに気が付いた中也さんは口角をひくつかせ、能力を解除した。
立原も周りの人達も、何故立原に能力が発動したのか分かっていない様子。
「いい加減にしないか君達!!もっと詳しく話したまえ、じゃないと納得出来ないだろう!!」
詳しくと言われて肩が少しビクついた。
首領が知ってるのは私が死ねない体質だというところまで…中也さんとそんなおぞましい約束をしている事や、私がそんな非人道的な思いを抱えて生きてきていたなんてことは話していない。
だから、寿命さえ有限なものになってしまえば、そこまでの事をしなくていいんじゃないかって考えた。
行き着いたところが、そこだった。
中也さんをこんな地獄の道のりに引きずり込まなくったって、私が中也さんと同じになれれば、それで済むだろうと考えたから。