第12章 夏の思い出
『大丈夫…中也さんなんにも悪くない。不器用なだけなの、必死なだけなの』
「……前々から思ってましたが、白石さんは自己を肯定してなさすぎるように見受けられます。だいたい何かある時は中原さんや他の誰かが絡む時で、私と初めて会った時なんて自分の脚を大事にしていなかった」
『それが?死ぬような事でも無いですし、私は中也さんが無事に「そこですよ、中原さんが怒るのは」…』
分かってる。
だけど仕方ないじゃない、どうしたってそういう面じゃあ、私の方が強いんだから。
中也さんは死んじゃったらそれで終わりでも、私にはそれが関係ない。
中也さんは傷付いてそこが弱くなったとしても、私にはそれも関係ない。
治るんだもの…やり直せるんだもの。
どうやったって、死ねないんだもの。
自分が死なないって分かってるんだから、何かあったら盾にでも何にでもなって、この人を意地でも守り抜くだけの覚悟はある。
だけどそんな、死ねない私の前に、魅了的すぎる話が舞い込んできてしまった。
『……遠隔操作なんかで寿命を操られちゃ、いくら中也さんでもたまったものじゃない…私が出るのが適任だって分かってるでしょう?中也さん』
「確かにお前は適任だな…だが俺の言う適任とお前の考えてる適任とは別のものだ。違うか?」
ううん、多分合ってる
首を横に振って中也さんの考えを肯定する。
『でも…でも中也さん?もしかしたら、私が一番欲しいものが手に入るかもしれないの………無限のものなんてもういらない。中也さんといれる今、限界が欲しい…』
「それは許可出来ねえ。解決策はもう見つけてお互い納得しただろが…そういう闘い方をするんなら、お前は今日から監禁してでも外には出させねえ」
『!!…出来るものならどうぞ。私を捕まえられるんならの話だけど』
喉を震わせながらも意志を持った瞳で見据えて、挑発するように微笑んだ。
初めてかもしれない、私がこの人に反抗するのは。
ここまで言わせた中也さんに従わずに、意見を衝突させるのは。
「お前…正気かよ?俺相手にそこまで言えんのか?」
『中也さんこそ本気?私の本気の度合いを一番に熟知してるのはそっちでしょう?』
状況が飲み込めていない様子のソラさんに構わず、私も中也も立ち上がる。
しかし流石にお互いにただの子供じゃあない。
場所を移す事にした。