第12章 夏の思い出
『…だから、何も企んでなんかないって言って……ッ、ぁ…っ』
「な、中原さん!?女の子の体にそんな風に力を加えたら「手前は黙ってろ!!」…し、白石さんが痛がってるじゃないですか!!?」
「痛がるレベルに収まらねえかもしれねえ事考えてやがるかもしれねえんだよこいつは!!!」
中也の言葉は的確なもので、何も言い返せる言葉がない。
へらへら笑って誤魔化せるだけの余裕だって無い。
あまりにも魅力的な異能力に、恐らく顔に出てしまったのだろう…中也はその辺敏感だから。
『痛がるレベルも何も…試してみたい、だけ…で……』
「馬鹿な真似すんじゃねえ、お前それでもし取り返しのつかねえ事になっちまったらどうするつもりだ!!?」
『その時はその時…ぃ、た……ぁッ、やだ…っ、中也さ…やめ…っ!』
「……ッ、そういうところだけは気に入らねえ!!クソッ…」
あまりの痛みに抵抗すれば、吐き捨てるように手を離された。
ソラさんが間に入ってくれるも、今回の件に関しては完全に私が悪い。
中也が怒ったって当然だ。
「な、なんで中原さんはそんなに怒って…?……白石さん、とりあえず冷やしましょ?跡が残ると大変で…!?」
赤くなった肩を見たソラさんが異変に気が付いた。
みるみるうちに元の色に戻る私の皮膚…中也もかなりの力を入れていたとはいえ、流石に手加減はされている。
しかしそれでも、この速さで完治するのはおかしな話。
『……跡とか、残らないから…中也さん怒らせた私が悪いの。………私が悪いの』
「お前が悪いわけあるか!!!それ以上んな事言ったら知らねえぞ!?そうなったのはお前のせいじゃねえって言ってんだろ!!」
『ッ、…ごめん、なさい……』
「…謝んじゃねえ」
『……ごめ、なさ…ぃ』
これ以外に言葉が浮かび上がってこなかった。
怖かった、ただそれだけ。
この人に痛くされるのが、この人に嫌われるのが…この人を怖く感じてしまった自分自身が。
前にもあったなこんな事、こういう時ってどうやって仲直りしてたっけ?
やだな、死ぬ方法ならいくらでも思いつくしふとした時に頭が回るのに。
仲直りだけは、経験不足でなんにも頭が回らないや。
「そんなに怒鳴りつけて何になるっていうんですか!?部外者なのは確かですけど、こんなに小さな女の子に対してそれは度が過ぎると思います!!」