第12章 夏の思い出
「…私達に指示を出す人物は、とても強い人……並の戦闘能力では叶わないような相手です」
『貴女達三人が暗殺を仕向けても?』
「はい…何せ相手は、中原さんや白石さんと同じ“異能力者”ですから」
想像していなかった内情に、私も中也も目を見開く。
これは厄介な事になってきた、相手が異能力者とあっては、能力の相性によっては中也だってどうなるか分からない。
太宰さんにお願いするにしたって、その相手を狙っているうちに物理攻撃を仕掛けられでもすれば戦局は大きく左右されてしまう。
私自身が異能力者であると相手に認識されているのは好都合だが、それにしてま面倒な事態になった。
『相手の異能力は見たんですか?どんなものなのか…』
「は、はい。本人に直接見せられて…その人の部下をその場で殺して見せられました」
『殺傷能力に優れた異能…?』
身体強化系なのかと思いもしたけれど、それであればそれこそ中也の敵ではない…はず。
特殊能力系の異能が一番厄介であるとは思うが、それも中也の異能があれば敵ではない。
私の中ではこの人さえ無事であれば、後は私が何とか出来るからそれでいい。
そこまで考えを巡らせているうちは良かった。
次のソラさんの言葉で、私は一瞬頭の中が真っ白になる。
「殺傷能力というか…人を殺すための能力なんです、あれは。…人間の寿命を、遠隔操作でも奪う事が出来る能力……ッ」
震えながら話すソラさんの声はやはり本物。
成程、そういう事か…圧倒的な力によって、ソラさん達三人は支配され、ここへ仕事をしに潜入をしてきたわけだ。
そして恐らく相手側は、この人の行動に私が疑問を感じて色々と勘づいたのだと誤解をした。
この間のあのボウガンは、警告の意味も含められていたのだろう。
下手をすれば死んでいたけれど。
それにしてもどうしたものか…そんな異能力者が相手ともなれば、のこのこと誰かを向かわせるわけにはいかない。
それに…
考えたところで、悪い癖が出た。
とても良い考えだ、だけど人としてあってはならないような考え。
それに気付いた中也が私を見てガッと肩を掴み、少し私を睨みつける。
『…ッ、手、痛い』
「知るか……お前、何企んでる」
『企んでるって酷い言い方…』
「いいから吐け、でないとお前を野放しには出来ねえぞ」
ギリ、と力を加えられる肩が痛かった。