第12章 夏の思い出
「今まで誰かから一回くらいもらったことねえの?一応誕生日はあったんだろ?」
『皆してケーキもってきてくれて天国だったよ?』
「そうきたか…っ」
ガクッと項垂れる中也を見て、少ししてからふわりと微笑む。
『中也と一緒にいれたらそれでいいよ、それだけ叶ったらもう十分』
「なんでそこでいい子発揮しやがるんだよお前は」
『私が生きてきて一番欲しかったのがそれだから』
「……いるのは大前提だっつったろが、お前以外の奴のとこになんかいかねえよ俺は」
椅子から立ち上がってこちらに歩み寄る中也の方に顔を向けると、突然脇腹に手を当てて持ち上げられた。
『!!?ちょ、中也さん離し……ッ』
「あ?…ああ、悪い。弱かったな」
『…ぁ……っ、なんでいきなり…?』
手を移動させて、私を抱き寄せるように抱え上げる中也。
もう擽ったくはないのだけれど、なんでこうされてるのか分からない。
「なんとなくだ、なんとなく。つかお前といるのは普段からしてる事なんだからプレゼントにも何にもなんねえだろが」
『!…中也の愛情があったら何もいらないよ?』
「そういう小っ恥ずかしい事よく言えんなお前…ああ風邪だったな。了解了解、一緒にいてやりゃいいんすね姫さんよ」
『そのたまに姫さんって呼ぶのいらない』
少し頬を膨らませて、むくれたように中也に言った。
「がらじゃなさすぎて流石に気持ち悪かったか?」
『違う………………私は中也のお嫁さんだもん』
「……結婚は成人してからだがな。そうかそうか、そんなに俺が好きかこいつ」
嬉しそうにギューっと抱きしめられ、ぐりぐりと中也の方に顔を寄せられた。
こういう事するから親バカって言うのに。
『苦しい、あと暑い』
「悪いとか言って離れると思うか?諦めろ、離してやんねえから」
『結婚詐欺なら許さないから』
「言ってろ、ボケてお前の事を忘れでもしねえ限りんな事ねえよ」
チュ、とリップ音を鳴らして額にキスされた。
『……そこはそうなっても結婚するって言ってよ』
「阿呆、そうなっちまったらお前と恋人になるところからまず始めねえとだろ」
『うわ、馬鹿だ、私馬鹿だこの人』
「お前も大概馬鹿だっつの。執務室戻って熱測ってゼリー食うか、そろそろ固まってる頃だ」
『!!ゼリー!!!♡』
「今無性に存在する全てのゼリーに腹が立ったわ」